・・・けれども、原作は前回の結尾からすぐに、『この森の直ぐ背後で、女房は突然立ち留まった。云々。』となっているのでありますが、その間に私の下手な蛇足を挿入すると、またこの「女の決闘」という小説も、全く別な廿世紀の生々しさが出るのではないかと思い、・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・最後の五は結尾であって、しかもそのあとに企韻の暗示を与え、またもう一ぺん初五をふり返ってもう一ぺん詠み直すという心持ちを誘致するためには、短いほうが有効であるかと思われる。これはあるいは多少牽強付会の説と見られるかもしれないがしかしとにかく・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・さらに驚くべきは蕪村が一句の結尾に「に」という手爾葉を用いたることなり。例えば帰る雁田毎の月の曇る夜に菜の花や月は東に日は西に春の夜や宵曙の其中に畑打や鳥さへ鳴かぬ山陰に時鳥平安城をすぢかひに蚊の声す忍冬の花散る・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・という小説の結尾にもあらわれている。「新胎」では、この作者によって一二年前提唱された能動精神、行動主義の今日の姿として、実力養成を名とする現実への妥協、一般的父性の歓喜というようなものが主流としてあらわれて来ているのである。 青野季吉氏・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
出典:青空文庫