・・・に描かれたる肉霊合致の全我的活動なるものは、その論理と表象の方法が新しくなったほかに、かつて本能満足主義という名の下に考量されたものとどれだけ違っているだろうか。 魚住氏はこの一見収攬しがたき混乱の状態に対して、きわめて都合のよい解釈を・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・損害の程度がやや考量されて来ると、天災に反抗し奮闘したのも極めて意義の少ない行動であったと嘆ぜざるを得なくなる。 生活の革命……八人の児女を両肩に負うてる自分の生活の革命を考うる事となっては、胸中まず悲惨の気に閉塞されてしまう。 残・・・ 伊藤左千夫 「水害雑録」
・・・しかし私は彼らが不死身であるか否かを考量した後に彼らを捨てたのではなかった。私にとっては、彼らが痛みを感ずる程度よりも、「かつて親しかった者を捨てた」という行為そのものが問題になるのである。従って人を傷つけたか否かよりも、人を傷つける行為を・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫