・・・く揶揄しながら、日本の陸軍が何十年か前の平面的戦術を継承して兵站線の尾を蜒々と地上にひっぱり、しかもそれに加えて傷病兵の一群をまもり、さらに惨苦の行動を行っているのにくらべて、アメリカの近代科学性は、航空力によって天と地との間に立体的桶をつ・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・ 一枚のハガキが来たきりで、又暫く音信が絶えていたところ、先日不意に航空郵便が来た。白い角封筒で、航空便として軍事郵便である。何かあった。直覚的にそう思われた。だが、その手紙は私あてではないのである。受けとる筈のものはそのとき家にいなか・・・ 宮本百合子 「くちなし」
・・・七日に小包が間に合わないから、速達で申上げたものを広島で買っておわたし下さいと電報したことや、航空便のダメなこと申しあげましたね。これをかき初めていたら、太郎が九日ごろのお手紙もって来てくれました。それともこれは十日におかきになったのかしら・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・そして「民間航空発展の貴い人柱」となった人々への哀悼、遺族への慰問の責任を表明した。けれども、当時あの新聞をよんだ一般市民は、阿佐操縦士の妹きくえさんの言葉をどう受けとっただろう。きくえさんは、涙に頬を濡して、「無電がついていなかったんでし・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・今日われわれの地球をとびまわっている航空機の発明もレオナルド・ダ・ヴィンチによって着手されていた。この事実は、歴史的に評価されている。だけれども、レオナルドが、彼のフロレンスの仕事部屋で、人間をのせて飛ぶことのできる機械について力学的な計算・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
・・・武器が発達し、航空能力が発達したことは、戦場を無限に拡大した。戦場が拡大されたということは、現代の戦争が決して軍隊と軍隊との間に行われる武力闘争ではなくなったことを示した。明治以来、満州や中国へいくたびも侵入して、さまざまの残虐行為を行いな・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・を抱いているとき、シュミット博士から、北極探検隊の航空方面の予定を作るようにと云いわたされて、彼が書いた報告書の性質である。「北極飛行」の筆者は語っている。「これらの人々と倶に私は、幾十回となく危機に遭遇し、その度に全精力を緊張さして困難な・・・ 宮本百合子 「文学のひろがり」
手提鞄の右肩に赤白の円い飛行会社のレベルがはられた。「航空ユニオン。27」廻転するプロペラーの速力を視覚に印象させるような配列法でこまかく、赤白、赤白。にとられたものです、それからこれが昨年の。真中に坐ってらっしゃるの・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫