・・・万葉の短歌や蕉門の俳句におけるがごとく人と自然との渾然として融合したものを見いだすことは私にははなはだ困難なように思われるのである。 短歌俳諧に現われる自然の風物とそれに付随する日本人の感覚との最も手近な目録索引としては俳諧歳時記がある・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・来の詩に現われた民族的国民的に固有な人世観世界観の変遷を追跡して行くと、無垢な原始的な祖先日本人の思想が外来の宗教や哲学の影響を受けて漸々に変わって行く様子がうかがわれるのであるが、この方面から見ても蕉門俳諧の完成期における作品の中には神儒・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・檀林派の作者といえどもその意匠句法の滑稽突梯なるにかかわらず、またこの俗語中の俗語を用いたるものを見ず。蕉門も檀林も其嵐派も支麦派も用いるに難んじたる極端の俗語を取って平気に俳句中に入したる蕪村の技倆は実に測るべからざるものあり。しかもその・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
出典:青空文庫