・・・その経験は裏付けられた、作家の主観が、即ち、その作品の厚みであり、深さであるから、批評めいたものを、必要としないというにある。 主観の必要なことは、いまさら言うを要しない。たゞ、批評ということに、全部の問題がかゝっているのだ。 然ら・・・ 小川未明 「何を作品に求むべきか」
・・・このことは、一層、現実生活の幻滅を裏付けた。そして、人間は欲望を離れて生活も存在もあり得ないと言うにあった。無理想を呼号したのも、偶然でなかった。男女関係は欲望の充塞以外にないとも言った。その思想には、人間性の飛躍も、向上も無視した誤謬はあ・・・ 小川未明 「婦人の過去と将来の予期」
・・・こんどの事件ではっきりしたことは、人間はただ頭がいいということではなしに、科学的な裏付けをもった正しい判断が大切だということと、社会がすべての人にとって不合理のないように改善されなければ、いつまでたっても邪教はでてくるということです。〔・・・ 宮本百合子 「双葉山を手玉にとった“じこう様”について」
・・・このことが、ゴーリキイにいまいましい思いを幾度かさせるが、彼等の言葉の一つ一つを裏付けている「人類愛」の感情は、ゴーリキイの心に全く新たな一面を開発する力をもっていた。人間の精神の裡にこういう感情があるという発見、そして、その感情に身を献げ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫