・・・平等で、自由で、親睦で、虚偽というものが、生活の上になかったなら。 理想の社会というものは、決して虚偽の上には建設されない。純情な人間性の上に於てのみ築かれる社会でなければならない。科学がいかに発達をしても、其れだけでは、理想の社会は造・・・ 小川未明 「草木の暗示から」
・・・このように僕は、ただならぬ親睦を彼に感じ、力こぶをさえいれていたのであった。 庭先からはいって行くと、青扇は、いかにも嬉しげに僕をむかえた。頭髪を短く刈ってしまって、いよいよ若く見えた。けれど容色はどこやらけわしくなっていたようであった・・・ 太宰治 「彼は昔の彼ならず」
・・・社会親睦、人類相愛の大義に背くものというべし。 また、一方の学者においても、世間の風潮、政談の一方に向うて、いやしくも政を語る者は他の尊敬を蒙り、またしたがって衣食の道にも近くして、身を起すに容易なるその最中に、自家の学問社会をかえりみ・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・有名な中島湘煙が十九歳で政談演説を行い、婦人政治家として全国遊説をし、岡山に女子親睦会というのが出来た。成田梅子は、仙台に女子自由党を組織し、男女同権という声は、稚拙ながら新興の意気をもって、日本全国に響いたのであった。 ところが、一八・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・そして世界の各民主国家が、その民主的進展の歴史的段階に応じて、それぞれの経験と成果とを研究しあい摂取しあうことこそ、最も真実な親睦であると思う。世界の民主的文学運動を貫いて、そこに共通の研究題目のあるのは当然である。資本家・企業家たちの組織・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・その小悪魔の嗅覚が、ごくの身近に、やはり目さめている性の異なった同類をかぎつけて、しかも親睦をむすぶすべもない条件を、そんな野蛮さで反撥したのであったろうと思う。 兄弟、姉妹の間にあるそういう微妙で苦しいものも、親たちにとっては一律に子・・・ 宮本百合子 「青春」
・・・ 次に夜業四割引反対の闘争のために、全員をまき込むことを考え、親睦会の自治化をはかる。幹事改選に壮年のSを当選させる。そして、大衆的懇談会で革新有志二十人をつくる。国鉄。 一般に官業だから政府のつぶれぬうちは従業員の生活は保・・・ 宮本百合子 「大衆闘争についてのノート」
・・・けれども、ここに一人の人があって、真面目に知人と知人との間の親睦を計ろうとするとき、一方の人に、他のものの誹謗をしてきかすだろうか。双方に何か不一致があるときは、具体的にその一致点を研究し、公平に見て、くらべて、一致点を発見して行こうとしな・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・ そもそもペンクラブというものが、文筆にたずさわる人々の親睦機関から今日のように文化的により深い意味と活動とを行うようになったのは、ドイツでユダヤ系の作家、左翼作家を迫害して、ベルリン・ペンクラブを強奪してナチの宣伝に利用しようと企てた・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
・・・岡山には女子親睦会という政治結社が出来てあったし、仙台には女子自由党というのが組織されていた。その指導者は成田梅子という人であった。 これと略同じ時代、一方に婦人の政治活動が盛んであったと共に、女子教育もアメリカの宣教師たちの指導によっ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫