・・・そうしてその裂け目からは、言句に絶した万道の霞光が、洪水のように漲り出した。 オルガンティノは叫ぼうとした。が、舌は動かなかった。オルガンティノは逃げようとした。が、足も動かなかった。彼はただ大光明のために、烈しく眩暈が起るのを感じた。・・・ 芥川竜之介 「神神の微笑」
・・・胸に例の一条が在る拙者は言句に塞って了った、然し直ぐ思い返してこの依頼を快く承諾した。 と云うのは、貴所に対して済ぬようだが、細川が先に申込み老人が既に承知した上は、最早貴所の希望は破れたのである、拙者とても致し方がない。更に深く考えて・・・ 国木田独歩 「富岡先生」
・・・という言句をめぐる論争の性格を検べて見てもよくわかる。小林多喜二は人民解放史と文学史との上にうけとられているというより、もっと生々しく、現代の心理のなかに生きている。不幸にして、その心理は、日本人民がファシズム権力にひしがれつづけて来た被抑・・・ 宮本百合子 「小林多喜二の今日における意義」
出典:青空文庫