・・・ないがなんでも都の歌人でござったそうじゃが歌枕とかをさぐりにこのちに御出なさってから、この景色のよさにうち込んで、ここに己の骨を埋めるのだと一人できめて御しまいなされ京からあととりの若君、――今の殿が許婚の姫君と、母君と弟君をつれて御出なさ・・・ 宮本百合子 「錦木」
・・・ 両親の死後、彼女の新たな保護者となった長兄は生憎、許婚者の父とは政敵の関係にあって、その反感から、どうしても二人の結婚を許可しようとはしなかったそうです。 そこで、当時の意向では、ほんの当分の方便として、彼女は従来の生活をすっかり・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・ 松本氏が、急になくなられた許婚の愛人栄子さんと岳父の代人で結婚の盃をあげられた行為は、氏の年齢や学歴やその地方での素封家であるというような条件と対照して、私共の注意を一層呼び起したと思われます。「松本氏の年や地位にてらして何という今の・・・ 宮本百合子 「私も一人の女として」
出典:青空文庫