・・・少女だったわたしは、日本の農村というものが、どんなに封建的な土地関係におかれており、また、どんなにその農業の方法がおくれているかということを知らなかった。農民生活のそれらの条件が、一方で益々発展する資本主義の経済機構から板ばさみをうけて、農・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第一巻)」
・・・士 一七名 九名 一九名 ― ― 一名 三名会社員 三名 三名 七名 ― ― 一名 二名医師 五名 一名 ― ― ― 三名 一名農業 一四名 二一名 五名 六名・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・耕地面積は五年前を一〇〇とすると一四五で、世界のよその国ではアメリカでも農業恐慌で耕作面がどんどん縮少しているのに比べて実に大した違いである。 農民の収入も自然と年々高まって来ている。 集団農場にも種類があって、単に蒔つけ、刈入れ、・・・ 宮本百合子 「今にわれらも」
・・・日本の農業その他と雪とは深いつながりがある。そのことからこの学者の態度も私たちの共感を誘うものである。同じ著者に「雷」がある。雷についての世界の探究にふれて語られていて、平明な用語は私たちに親しみぶかくこの本に近づけさせる。 第六話。山・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・供出したがらないには、農業会、統制会、その他の全配給機構への農民の不信任があるのだし、第一には、これまで俺たちは騙されていた、という支配権力に対する深い思いが原因しているのである。 都会の消費者は、目前の食糧難に気がたって、つい農村を羨・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・ 古貨車を利用してこしらえた農業労働者のキャンプのわきには、炊事車が湯気を立てている最中だ。 婦人労働者の派手な桃色のスカートが、炎天のキャンプの入口にヒラヒラしている。彼女は日やけした小手をかざして、眩しい耕地の果、麦輸送の「エレ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・うねくる個人耕作の細い畦が消えて、そこに赤旗をかかげた農業機械ステーションを中心とする集団農場が現われた。 重工業の発展はソヴェトの尨大な野を統制ある農業生産場、工業原料の生産場とかえつつある。農村の活溌な社会主義的発達はとりもなおさず・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 工業・農業における社会生産を最低のレベルにおいてでもどうやら保ちつづけたのは勤労婦人の献身でした。一九四〇年以後の日本のすべての炭坑には婦人が入坑し、過重な労役に服してきました。若い勤労婦人は最も危険・有害なあらゆる生産部門においてさ・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・注意ぶかい読者には、一人の筆者が、ある場面では中共の農業政策に関して官僚報告めいた文書を発表し、他の場面では中共の文化啓蒙運動・文学政策についてかき、またちがった婦人雑誌の中では柔かい筆でインドネシアあたりの少女の物語をかいているのを発見し・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・靴をはいた足や長い裾と足袋で隠された足などはきわめて少数で、多くは銅色にやけた農業労働者の足でした。彼はうなだれたままその足に会釈しました。せいぜい見るのは腰から下ですが、それだけ見ていてもその足の持ち主がどんな顔をしてどんなお辞儀をして彼・・・ 和辻哲郎 「土下座」
出典:青空文庫