・・・民主主義の潮流に逆行する現在のファッショ的存在は、全世界の民主主義を愛する人により徹底的に糺弾され断罪されるときがくるだろうということを私はいいたい。日本の検察当局が事実正義を愛する者の味方であるならば、この陰謀の一つであるこの公訴を即刻と・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・汽罐車だけが、シュッ、シュッと逆行していると、そのわきを脚絆をつけ、帽子をかぶった人が手に青旗を振り振りかけている。貨車ばかり黙って並んでいるところへガシャンといって汽罐車がつくと、その反動が頭の方から尻尾の方までガシャン、ガシャンとつたわ・・・ 宮本百合子 「田端の汽車そのほか」
・・・がて、リアクションとして、一部に極端な文化文学上の経済主義をおこすことになり、政治と文学との関係は、一九二〇年代の初期、プロレタリア文学運動の発芽時代に一部の実践家によって云われたような、機械論にまで逆行して行った。 これらの過程に、民・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・小説が、真実に人民的な歴史を映すテーマで書けなかったように、評論も客観的なよいところを抹殺されて、文芸評論でさえ、文学史を逆行した鑑賞批評しか存在を許されなかった。その時代に一つの現象として随筆の流行が見られた。いろいろ個性的な色彩をもった・・・ 宮本百合子 「はしがき(『女靴の跡』)」
・・・男の社会生活の面のひろいということが、いわば卵についても干うどんについても家庭にだけこもっていた主婦たちよりより積極な解決の方法を見出しやすくしていて、餌を運ぶ男としての役割が逆行的にふえて来ている。そんな工合に、男のひと自身には今日が感じ・・・ 宮本百合子 「働く婦人」
・・・ けれども、本当に自主的な自覚のある勤労者として、今の日本の、民主化とは皮肉悪辣に逆行している出版事情を観察した場合、働くものの鋭い見識と実力の発揮は、単純に、経営者対被雇傭者の経済問題だけに局限されているはずのものなのだろうか。自分の・・・ 宮本百合子 「文化生産者としての自覚」
・・・を生徒によませ始めているという逆行ぶりです。社会のそういうおくれた勢は、薄弱などころか極めて強固です。そうとしてみれば、時局におし流されない薄弱でないものは総てそれなりで女性の向上のために有意義なものとも云えないことは明らかです。それらの生・・・ 宮本百合子 「ルポルタージュの読後感」
・・・ しかし、若い世代は一般的に年齢が若いだけの必然によって、そういう歴史の上での逆行は本然的に不可能であると感じており、しかも一方にはますます逼迫する経済事情、自由な空気の欠乏などが顕著であり、生活態度全般にわたって帰趨に迷うとともに、恋・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・家康自身はかならずしも時代に逆行するつもりはなかったかもしれないが、彼の用いた羅山は明らかに保守的反動的な偏向によって日本人の自由な思索活動を妨げたのである。それが鎖国政策と時を同じくして起こったのであるから、日本人の思索活動にとっては、不・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫