・・・ 読むことから、そして見ることから、われ/\の随時に獲たあるものに対して、統一を与え組織を与えるものは、実に思索の賜物である。三 先ず試みよ 文章を作るまでの用意については、大体を尽したと思う。そこで、今諸君に望むところ・・・ 小川未明 「文章を作る人々の根本用意」
・・・は没後四十六年の今日でも実に驚くべき鮮明さをもって随時に眼前に呼び出される。 この糸車というものが今では全く歴史的のものになってしまったようである。自分の子供などでもだれも実物を見たことはないらしい。産業博物館とでもいうものがあれば、そ・・・ 寺田寅彦 「糸車」
・・・そうして牛乳に入れるための砂糖の壺から随時に歯みがきブラシの柄などでしゃくい出しては生の砂糖をなめて菓子の代用にしたものである。試験前などには別して砂糖の消費が多かったようである。月日がめぐって三十二歳の春ドイツに留学するまでの間におけるコ・・・ 寺田寅彦 「コーヒー哲学序説」
・・・ 音波によって起こされた電流の変化を、電磁石によって鋼鉄の針金の付磁の変化に翻訳して記録し、随時にそれを音として再現する装置もすでに発見されて、現にわが国にも一台ぐらいは来ているはずである。これならば任意に長い記録を作る事も理論上可能な・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・ もし文芸院がより多く卑近なる目的を以て、文芸の産出家に対して、個々別々の便宜を、その作物上の評価に応じて、零細にかつ随時に与えようとするならば、余はその効果の比較的少きに反して、その弊害の思ったよりも大いなる事を断言するに憚らぬもので・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・今この語法に従い女子に向て所望すれば、起居挙動の高尚優美にして多芸なるは御殿女中の如く、談笑遊戯の気軽にして無邪気なるは小児の如く、常に物理の思想を離れず常に経済法律の要を忘れず、深く之を心に蔵めて随時に活用し、一挙一動一言一話活溌と共に野・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・妻を離別するも可なり、妾を畜うも可なり、一妾にして足らざれば二妾も可なり、二妾三妾随時随意にこれを取替え引替うるもまた可なり。人事の変遷、長き歳月を経る間には、子孫相続の主義はただに口実として用いらるるのみならず、早く既にその主義をも忘却し・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
出典:青空文庫