・・・ 交換手は笑って、「放送中の人を、電話口に呼べませんよ」「あッ、なるほど、こりゃうっかりしてました。もしもし、じゃ、杉山さんにお言伝けを……。あ、もしもし、話し中……。えっ? 電熱器を百台……? えっ? 何ですって? 梅田新道の事務・・・ 織田作之助 「昨日・今日・明日」
・・・案内の若い、労働通信員をしている技師と工場内の花の咲いたひろい通路を歩いていたら、こっちでは電熱炉で鉄を溶かしている鍛冶部の向い側のどこかで、嬉しそうなピアノの音がしはじめた。「セルマシストロイ」は巨大工場で未完成だ。各部がまだクラブを・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ なぜなら、恋愛問題だけをきりはなし、例えば正月、炬燵にあたったり、ハイカラなら、電熱ストーブにでもあたりながら、「ねえ、今度恋愛するとしたら、どんなのしたい?」「さあ」「婦人公論の新年号みた? あるわよ、いろんなのが……」・・・ 宮本百合子 「ゴルフ・パンツははいていまい」
・・・ 電熱のコンロに焙ってたべた。「あつくしようよ」 おつゆでも、お茶でも、生活の愉しさは湯気とともに、というように、あつくするのであった。ひろ子には、そういう重吉の特別な嗜好が実感された。さっき、コンロに湯わかしをかけたとき、・・・ 宮本百合子 「風知草」
出典:青空文庫