・・・ 若し私達がそれをモデルにした処がいかにも下司な馬鹿馬鹿しい滑稽ほか出されませんからねえ。 そんな事を書くには年も若すぎるし第一あんまり幸福すぎますもの。」 千世子はいかにも研究的な様子をして云った。「ほんとに私共は苦労しら・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・ どれ程丁寧に臆病に寧ろ馬鹿馬鹿しい程の心遣いを以て自分自身を取り扱うか。 私は一昨年の病気以来深くその生き様とする願望の忍耐強さ従順さを感じて居る。 其れ故若し彼が真個の全快を希望したなら恐らく彼はだれでもと同様に子供の様にな・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・そしてキ劇の犠牲になるようなことは 馬鹿馬鹿しい悲劇だったという気がしますね」〔欄外に〕乞食の戦争は わたしにとって一つも喜劇ではなかった。獅子文六 「きけわだつみのこえ」なんかも 初め読んだときには感動・・・ 宮本百合子 「東大での話の原稿」
・・・ さあ、 さ、さっさと出て御行きってば。と云うと、女中は手放しでオイオイ泣きながら、「出て行くともね、 手、手をつついて居て下さいったって誰が居てやるもんか。 馬鹿馬鹿しい。 此処ば、ばかりにおててんとう・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
・・・けれ共、あんまり自分達の世界と私達の世界を違えて考え、何の苦労も努力もしずにのらくらと暮して居る様に、馬鹿馬鹿しいほど云いたてると、仕舞いには私は腹をたてて仕舞う。その時も私は歩きながら大つまみに東京の生活振りを話してきかせた。皆は東京と云・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・だが、それは芸術と云う一つの概念が感覚的なものか直感的なものか意志的なものであるかと云うことについて論証することと何ら変るところもない馬鹿馬鹿しい小話にすぎない。もしも風流なるものが感覚から生れ出るものか或いは意志からか直感からかと云うなら・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・死ぬなんていうことは、下らない、何んでもない、馬鹿馬鹿しいことなんだ。」「あたし、もうこれ以上苦しむのは、いや。」と妻はいった。「そりゃ、そうだ。苦しむなんて、馬鹿な話だ。しかし、生きているからって、お前は俺に気がねする必要は、少し・・・ 横光利一 「花園の思想」
出典:青空文庫