・・・さすが高位の御身とて、威厳あたりを払うにぞ、満堂斉しく声を呑み、高き咳をも漏らさずして、寂然たりしその瞬間、先刻よりちとの身動きだもせで、死灰のごとく、見えたる高峰、軽く見を起こして椅子を離れ、「看護婦、メスを」「ええ」と看護婦の一・・・ 泉鏡花 「外科室」
・・・これとても、ゲエテの素朴な詩精神に敬服しているのではなく、ゲエテの高位高官に傾倒しているらしい、ふしが、無いでもない。あやしいものである。けれども、兄妹みんなで、即興の詩など、競作する場合には、いつでも一ばんである。できている。俗物だけに、・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・これとても、ゲエテの素朴な詩精神に敬服しているのではなく、ゲエテの高位高官に傾倒しているらしい、ふしが、無いでもない。あやしいものである。けれども、兄妹みんなで、即興の詩など競作する場合には、いつでも一ばんである。出来ている。俗物だけに、謂・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
出典:青空文庫