-
・・・から、鹿は春日の第一殿鹿島の神の神幸の時乗り玉いし「鹿」から、烏は熊野に八咫烏の縁で、猿は日吉山王の月行事の社猿田彦大神の「猿」の縁であるが如しと前人も説いているが、稲荷に狐は何の縁もない。ただ稲荷は保食神の腹中に稲生りしよりの「いなり」で・・・
幸田露伴
「魔法修行者」
-
・・・このころは霊岸島の鹿島屋清兵衛が蔵書を借り出して来るのである。一体仲平は博渉家でありながら、蔵書癖はない。質素で濫費をせぬから、生計に困るようなことはないが、十分に書物を買うだけの金はない。書物は借りて覧て、書き抜いては返してしまう。大阪で・・・
森鴎外
「安井夫人」