・・・「Pourquoi ?……le diable est mort !……」「Oui, oui……d'enfer……」 僕は銀貨を一枚投げ出し、この地下室の外へのがれることにした。夜風の吹き渡る往来は多少胃の痛みの薄らいだ僕の神経を・・・ 芥川竜之介 「歯車」
・・・それならば今日生徒に教えた、De gustibus non est Disputandum である。蓼食う虫も好き好きである。実験したければして見るが好い。――保吉はそう思いながら、窓の下の乞食を眺めていた。 主計官はしばらく黙っていた・・・ 芥川竜之介 「保吉の手帳から」
・・・口々に La mer est calme, la mer est calme.(好い凪と云っている。次に何と云ったか忘れたが、とにかく「海が荒れ出した」という意味の言葉を繰返している。その間にも断えず皆が卓の下で次々に品物を渡しているような・・・ 寺田寅彦 「追憶の冬夜」
・・・その序詩の末段に、Qu'importe! ce n'est pas ta splendeur et ta gloireQue visitent mes pas et que veulent mes yeux ;Et je n・・・ 永井荷風 「霊廟」
・・・ordo et connexio idearum idem est, ac ordo et connexio rerumということができる。 スピノザの原因というのは、すべてカウザ・スイの意義を有ったものと考うべきであろう。本質が存在を・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・か云うと、若殿がつっけんどんに、わたし共はフランス語は話しませんと云って置いて、自分が呆れた顔をしたのを見て女に聞えたかと思う程大きい声をして、「Tout(ツウ ce qui brille, n'est pas or」と云ったので、始て・・・ 森鴎外 「かのように」
出典:青空文庫