出典:青空文庫
・・・を宣伝し、カイザーは「ドイツ」を宣伝した。これらはある意味ではたしかにききめはあった。しかしこの場合にも罪のない紅の花は数限りもなく折られ踏みつぶされて、しかしておしまいには宣伝者自身それらの落花の中に埋められた。その墓場からはやはりいろい・・・ 寺田寅彦 「神田を散歩して」
・・・その結果から得た自信がカイザーをあの欧州大戦に導いたのかもしれないという気がする。それはとにかく、ドイツではすでにそのころから政治と科学とが没交渉ではなかったと言ってもよい。 よくは知らないが現在のソビエト・ロシアの国是にも科学的産業興・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・その無名氏なるものがカイザー・ウィルヘルム二世であることが誰にも想像されるようにペンク一流の婉曲なる修辞法を用いて一座の興味を煽り立てた。 ペンクは名実共にゲハイムラートであって、時々カイザーから呼立てられてドイツの領土国策の枢機に参与・・・ 寺田寅彦 「ベルリン大学(1909-1910)」