出典:青空文庫
・・・ と大声で言って衆口を閉じさせ、ひとまず落ちつく事にいたしましたが、さてその後、シーボルトという人が日本にまいりまして、或る偶然の機会にれいの一件がのそりのそり歩いているのを見つけて腰を抜かした。何千年も前に、既に地球上から影を消したものと・・・ 太宰治 「黄村先生言行録」
・・・ーヴェーの血液循環の発見があり、やがてパストゥールによって細菌が発見されたのも、ジェンナーの種痘の試みも、モルトンによる麻睡薬の試用も、すべて十九世紀の人々の偉業であるということは、日本の徳川末期に、シーボルトその他によって西洋医学が導き入・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・は昨年の同じ作者による「シーボルト夜話」の続篇として書かれた。貴司山治氏の戯曲「洋学年代記」には、学者としての良心と達識とのために国法にふれた幕末蘭学者の一群と間宮林蔵の運命とが扱われた。村山知義氏は「或るコロニーの歴史」に朝鮮人の生活を描・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・書庫には、出島和蘭屋敷の絵巻物、対支貿易に使用された信牌、航海図、きりしたんころびに関する書つけ、シーボルトの遺物、フェートン号の航海日誌、羅馬綴の日本語にラテン語を混えた独特な趣味あるミッション・プレス等々価値あるものが沢山ある。 其・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・左の硝子箱に、シーボルト着用の金モウル附礼服が一着飾ってある。小さい陶器のマリア観音、踏絵、こんたすの類もある。ミッション・プレス、その他切支丹関係の書類は、歴史的に興味深いばかりでなく、芥川氏が数篇の小説中に巧に活用し、その芸術的効果を高・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」