出典:青空文庫
・・・ Nacht.Romain Rolland : Le jou de l'amour et de la mort.D. H. Lawrence : Sons and lovers.Andr Gide : La porte troi・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・ いちばん高級な読書の仕方は、鴎外でもジッドでも尾崎一雄でも、素直に読んで、そうして分相応にたのしみ、読み終えたら涼しげに古本屋へ持って行き、こんどは涙香の死美人と交換して来て、また、心ときめかせて読みふける。何を読むかは、読者の権利で・・・ 太宰治 「一歩前進二歩退却」
・・・そのとしの秋、ジッドのドストエフスキイ論を御近所の赤松月船氏より借りて読んで考えさせられ、私のその原始的な端正でさえあった「海」という作品をずたずたに切りきざんで、「僕」という男の顔を作中の随所に出没させ、日本にまだない小説だと友人間に威張・・・ 太宰治 「川端康成へ」
・・・……シェストフ的不安とは何であるか、僕は知りません。ジッドは『狭き門』を読んだ切りで、純情な青年の恋物語であり、シンセリティの尊さを感じたくらいで、……とにかく、浅学菲才の僕であります。これで失礼申します。私は、とんでもない無礼をいたしまし・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・文学のほうではアンドレ・ジッドとトオマス・マンが好きです、と言ってから淋しそうに右手の親指の爪を噛んだ。ジッドをチットと発音していた。夜のまったく明けはなれたころ、二人は、帝国ホテルの前庭の蓮の池のほとりでお互いに顔をそむけながら力の抜けた・・・ 太宰治 「ダス・ゲマイネ」
・・・プウシュキンもとより論を待たず、芭蕉、トルストイ、ジッド、みんなすぐれたジャアナリスト、釣舟の中に在っては、われのみ簑を着して船頭ならびに爾余の者とは自らかたち分明の心得わすれぬ八十歳ちかき青年、××翁の救われぬ臭癖見たか、けれども、あれで・・・ 太宰治 「二十世紀旗手」
・・・白面の文学青年、アンドレ・ジッドに与う。「早く男らしくなってくれ。立場をどっちかに、はっきりと、きめてくれ。」 アンドレ・ジッドは演説した。「淑女、ならびに、紳士諸君。シャルル・ルイ・フィリップは、絶倫の力と、未来とを約束しながら、昨年・・・ 太宰治 「碧眼托鉢」
・・・ In a word という小題で、世人、シェストフを贋物の一言で言い切り、構光利一を駑馬の二字で片づけ、懐疑説の矛盾をわずか数語でもって指摘し去り、ジッドの小説は二流也と一刀のもとに屠り、日本浪曼派は苦労知らずと蹴って落ちつき、はなは・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・天を相手にせよ。ジッドは、お金持なんだろう? すべて、のらくら者の言い抜けである。私は、実際、恥かしい。苦しさも、へったくれもない。なぜ、書かないのか。実は、少しからだの工合いおかしいのでして、などと、せっぱつまって、伏目がちに、あわれ・・・ 太宰治 「懶惰の歌留多」
優れた作品を書く方法の一つとして、一日に一度は是非自分がその日のうちに死ぬと思うこと、とジッドはいったということであるが、一日に一度ではなくとも、三日に一度は私たちでもそのように思う癖がある。殊に子供を持つようになってからはなおさらそ・・・ 横光利一 「作家の生活」