出典:青空文庫
・・・その上、君はダス・マンということを知っているでしょう。デル・マンではありません。だから僕は君の作品に於て作品からマンの加減乗除を考えません。自信を持つということは空中楼閣を築く如く愉快ではありませんか。ただそのために君は筆の先をとぎ僕はハサ・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ 主人公はオスタップ・ベンデルという山師で、北極飛行で世界に有名なシュミット博士の息子と称するいかさま師である。このベンデルが、永年の夢として抱いているリオ・デジャネイロ市へ永住するための資金を稼ごうとして、数年来あらゆる悪辣な秘密手段・・・ 宮本百合子 「音楽の民族性と諷刺」
・・・カソリック詩人のポール・クロウデルも、日本に来たときは、お濠の石垣を詩につくったし、日本の柳、三味線、徳川時代の服装の女を配した夢幻劇をつくった。日本の女の美は昔風のしとやかさ、髷、袂にあるとヨーロッパの女にいわれて、ある当惑を感じない今日・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・そしてその誤のために、次の数句のうちにあるデンをデルと見誤った。向君には私はまだ礼を言わずにいる。新人の書振では、私なんぞが礼を言ったって受けられぬかも知れない。しかし兎に角ここで感謝の意だけ発表して置く。新人には別に二三の指摘がしてあった・・・ 森鴎外 「不苦心談」