出典:青空文庫
・・・ヘンリー・フォードが催したヨーロッパ早まわり競争に参加して、十日間に六千マイルを突破して一等になり、フォードより自動車を一台おくられたことがある。この早まわり競争の道づれも弟のクラウスであり、しかも早まわり記事を新聞におくり、あとから一冊に・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・ フォードが一品一工場としたやりかたで生産工程の組織では全国的にフォード化し分業化しつつ、しかも、村を決してその工業を専門とする工村にはせず、飽くまで副業にとどめて、古来のままの農業精神を主とし、農村全体としての文化の水準などはあるがま・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・駅の下、街に二台幌型フォードがあった。列車の中から見晴らせるだけのところにでも、いくつか新しい工場が建ちかけている。ウラル地方はこのスウェルドロフスキーを中心として、СССРの大切な石炭生産地、農業用トラクター生産地だ。一九三〇年、アメリカ・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・いかに古フォードがやすく買えて、労働者農民が電話、自動車をつかう率の高いアメリカでも、全国の経済が下降期にあって、農民の恐怖と、破綻を物語るスタインベックの「怒りの葡萄」がベスト・セラーズとなっているのが当時の社会の現実の面であった。ダイジ・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・事務所のわきにフォードの幌形自動車がとまって、踏段に片足かけ、パイプをほじっているのは、縞シャツのアメリカ技師だ。洒落た鎌と槌との飾りをつけた小屋に、国立出版所の売店が本をならべている。―― 大体ソヴェト同盟の五ヵ年計画は、いろいろと予・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 私はその話から、有名なフォード自動車工場の有様を思い起した。あすこは能率増進のために極度に分業化され、たとえば鋲をこしらえる部では何年経とうがそれだけやらせられるから、さてクビになると機械工といってもかたわで修繕工にさえなれない。これ・・・ 宮本百合子 「個性というもの」
・・・を読むと、或る年の誕生日のお祝いに彼女のお母さんが一台の中古の飛行機をくれたことから、彼女の婦人飛行家としての出発が始まったことが語られていて、そういう日常の感情をこしらえた条件としてアメリカにフォードが行きわたっているということの文化上の・・・ 宮本百合子 「この初冬」
・・・資本と生産手段を独占する者が地球の東西にわたって世界数億の人民の生存を支配する現代の社会機構が、人間を非人間的な部分品と化しつつある。フォードの能率生産というシステムなしに、フォード工場の労働者の、全生涯を部分品とする有名なメカニズムはあり・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・メイエルホリドは、ソヴェト演劇の舞台は、がっしりよく組たてられた自動車、フォードが持つ美を、もたなければならないと、云っている。 この点について、非常に微妙な一つの面白い観察が下される。 成程自動車は、実用の美をもっている。全体の構・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・その最もいちじるしい例は、フォードの自動車工場の労働者の生活にあらわれている。フォードの極度に合理化された能率増進の分業では、一つずつの作業に、人間として最大の能力を発揮する労働者が配置されている。そのかわり、万一その労働者がその職場を追わ・・・ 宮本百合子 「文学と生活」