出典:青空文庫
・・・しかし種々の鑑賞を可能にすると云う意味はアナトオル・フランスの云うように、何処か曖昧に出来ている為、どう云う解釈を加えるのもたやすいと云う意味ではあるまい。寧ろ廬山の峯々のように、種々の立ち場から鑑賞され得る多面性を具えているのであろう。・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・ アナトオル・フランスの書いたものに、こう云う一節がある、――時代と場所との制限を離れた美は、どこにもない。自分が、ある芸術の作品を悦ぶのは、その作品の生活に対する関係を、自分が発見した時に限るのである。Hissarlik の素焼の陶器・・・ 芥川竜之介 「野呂松人形」
・・・ご承知の通りカーライルが書いたもののなかで一番有名なものはフランス革命の歴史でございます。それである歴史家がいうたに「イギリス人の書いたもので歴史的の叙事、ものを説き明した文体からいえば、カーライルの『フランス革命史』がたぶん一番といっても・・・ 内村鑑三 「後世への最大遺物」
・・・彼の名をダルガスといいまして、フランス種のデンマーク人でありました。彼の祖先は有名なるユグノー党の一人でありまして、彼らは一六八五年信仰自由のゆえをもって故国フランスを逐われ、あるいは英国に、あるいはオランダに、あるいはプロイセンに、またあ・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・しかも、一たび神様となるや、その権威は絶対であって、片言隻句ことごとく神聖視されて、敗戦後各分野で権威や神聖への疑義が提出されているのに、文壇の権威は少しも疑われていないのは、何たる怠慢であろうか。フランスのように多くの古典を伝統として持っ・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・それに、借着をすれば、手間がはぶけて損料を払うだけでモーニングだとか紋附だとか――つまり実存主義は、戦後の混乱と不安の中にあるフランスの一つの思想的必然であります。このような文学こそ、新しい近代小説への道に努力せんとしている僕らのジェネレー・・・ 織田作之助 「猫と杓子について」
・・・否、西にあらず、まず東に行かん、まずアメリカに遊ぶべし、それよりイギリスに、その後はかねて久しく望みしフランスイタリアに。これを聞きて翁の目は急に笑みをたたえ、父上もさすがにこの度は許したまいしか、まずまずめでたし、いつごろ立ちたもうや。月・・・ 国木田独歩 「わかれ」
・・・ スピリットに憑かれたように、幾千の万燈は軒端を高々と大群衆に揺られて、後から後からと通りに続き、法華経をほめる歓呼の声は天地にとよもして、世にもさかんな光景を呈するのである。フランスのある有名な詩人がこの御会式の大群衆を見て絶賛した。・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・ フランス革命は、人類の歴史に新しい時代を開いた。それからパリ・コンミュンまでは、ブルジョア的進歩的な国民解放戦争があった。つまり、その戦争は、主として、封建的専制主義及び外国の支配拘束を取り除くことであった。それは進歩的戦争であった。・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・維新の革命に参加してもっとも力のあった人びとは、当時みな二十代から三十代であった。フランス革命の立者であるロベスピエールもダントンもエベールも、斬首台にのぼったときは、いずれも三十五、六であったと記憶する。 そして、この働きざかりのとき・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」