出典:青空文庫
・・・二葉亭はこの『小説神髄』に不審紙を貼りつけて坪内君に面会し、盛んに論難してベリンスキーを揮廻したものだが、私は日本の小説こそ京伝の洒落本や黄表紙、八文字屋ものの二ツ三ツぐらい読んでいたけれど、西洋のものは当時の繙訳書以外には今いったリットン・・・ 内田魯庵 「明治の文学の開拓者」
・・・ ロシアの近代には、人類精神史の底石をなすようにベリンスキー、ニェクラーソフ、ドブロリューボフらの文学者があった。ゴーリキイという一九〇〇年代からの民衆の革命史そのもののような作家がある。ジダーノフがその報告のなかで、現代ソヴェト作家が・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ツルゲーネフはゲルツェン会の伝統をもってニェクラーソフ、ベリンスキー等とともに西欧派に属するユートピア的社会主義者であり、当時のロシアよりも早く資本主義が発達しているヨーロッパ諸国、特にフランス・インテリゲンツィアの理想主義的解放論に深く影・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・日本のこんにちには、かつてのベリンスキーがロシア民衆のために書いたような文芸評論が必要です。それは民主主義文学にたずさわる者のためばかりでなく、人民の文化とは何か、人民の文学とは何か、人民の精神の歴史とは何かということを、あらゆる人が自身の・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・「郵便切手」そのほかの最近書いたものに、未発表のいくつかを加えた。「兄と弟」「書簡箋」「ベリンスキーの眼力」などは太平洋戦争中、作品の発表できなかった時分のノートから。「真夏の夜の夢」「デスデモーナのハンカチーフ」「復活」などは、珍しく芝居・・・ 宮本百合子 「はしがき(『女靴の跡』)」
・・・チェルヌイシェフスキー、ベリンスキーその他の人々の文芸評論は、世界文学に、社会と文学との生きている関係を理解させた。 ロシアの豊富で雄大な自然と、そこに営まれている社会の暗い恐るべく暴虐なツァーの封建的絶対制、その上に急に花咲き出した資・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ 文芸評論家としてのベリンスキーの生々とした精神の精髄がここに現れている。ベリンスキーという人の存在が人類の発展にどういう歴史的な価値をもたらしたかということを理解する鍵がここにかくされている。そして、これらの明らかな理性と人間社会の未・・・ 宮本百合子 「ベリンスキーの眼力」
・・・その一点こそは、ベリンスキーがシェクスピアについて云っているルネッサンスの歴史的核心、ルネッサンスの歴史性についてであった。現代とルネッサンス時代との間には、もう四五世紀が経過している。きょうのあらゆる社会の現象は、その間に発展し、複雑化し・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」