出典:青空文庫
・・・スクロドフスキー教授の末娘、小さい勝気なマリア・スクロドフスカとして、露帝がポーランド言葉で授業を受けることを禁じている小学校で政府の視学官の前に立たされ、意地悪い屈辱的な質問に一点もたじろがず答えはしたが、その視学官が去ってしまうと、今ま・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・金メダルを賞に貰って、マリアは女学校を卒業しました。が、その頃から益々切りつまって来た一家の経済のため、スクロドフスキーの娘たちは夫々自活の道を立てなければならなくなって、十六歳半の若いマーニャも苦しい家庭教師として働きだしました。その頃は・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・ ヨーロッパ文明はマリア以来の宗教的感傷をもって、東洋の文化は根づよい家族制度の伝統によって、いずれも母になろうとする女を或る程度まで聖なるものとした。だが、プロレタリアートの現実的な身持女が、何かの美感の対象となり得たことがかつて・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・特に、ここには、正面入口の中央に、大理石で、日本信徒発見記念のマリア像が在る。 空模様もよくなったので、私共は浦上へも行くことにした。浦上と云えば、静かな田舎であろうと思って居たところ、長崎の市の真中から電車で四十分ばかりの処だ。終点か・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・小さい陶器のマリア観音、踏絵、こんたすの類もある。ミッション・プレス、その他切支丹関係の書類は、歴史的に興味深いばかりでなく、芥川氏が数篇の小説中に巧に活用し、その芸術的効果を高めているような一種独特な用語、文体で書かれているため、文学的な・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・たとえばトルストイが『アンナ・カレーニナ』を書き、『戦争と平和』の中でナターシャとかアンドレー公夫人とか、それから公爵令嬢マリアなどを、あんなにいきいき書けたことはすでに知れわたっていることだし、ロマン・ローランは『ジャン・クリストフ』の中・・・ 宮本百合子 「不満と希望」
・・・しかし、優秀な個性と云うほどの資質は、いつも最も素直に、力いっぱいに歴史のそよぎに反応していて、たとえばフロレンスやマリアの様に、その矛盾と分裂とにおいてさえ、なお次の時代にとって無意義ではあり得ない何かの価値を、歴史のうちにもたらしている・・・ 宮本百合子 「まえがき(『真実に生きた女性たち』)」
・・・の中に、アンドレー老公爵と息子アンドレー、公女マリアとの関係等にもきびしく描かれている。ゴーリキイが「幼年時代」で母を書いている書きぶりは、五つで、もうあんまり母にかまわれなくなっている子供が、その母としてもその子としても避け難い力で、騒が・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・パン店の方では仕事に不馴れなデレンコフの妹マリアとその友達の、バラ色の頬をした娘とが商売している。 ゴーリキイは、朝早く、焼きあげたパンをデレンコフの店へ運び、更にいろんなパンの詰った二プードの籠をもって神学校へ走って行った。時によると・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・本当の「マリア・バシュキルツェフの日記」はここにあります。これこそ、かえりみるべき価値をもっている。若い女性の生活を何かの意味で教え豊かにするものを含んでいる。容赦のない現実を生きた痛切な一少女の吐露があります。 ヘルマン・コステルリッ・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」