出典:青空文庫
・・・西洋の小説もその頃リットンの『ユーゼニ・アラム』を判分教師に教わり教わりながらであるが読んでいた。であるから貸本屋の常得意の隠居さんや髪結床の職人や世間普通の小説読者よりは広く読んでいたし、幾分かは眼も肥えていた。であるから坪内君の『書生気・・・ 内田魯庵 「明治の文学の開拓者」
・・・一つは憲法発布が約束されて政治が休息期に入ったからだが、一つは当時の欧化熱が文芸を尊重する欧米の空気を注入して、政治家もまた靖献遺言的志士形気を脱してジスレリーやグラッドストーン、リットンやユーゴーらの操觚者と政治家とを一身に兼ぬる文明的典・・・ 内田魯庵 「四十年前」
・・・勿論西洋のものもそろそろ入って来ては居りましたのですが、リットンものや何ぞが多く輸入されていたような訳で、而して其が漢文訳読体の文になったり、馬琴風の文の皮を被ったりして行われていたのでしたから、余り西洋風のものには接していなかったのであり・・・ 幸田露伴 「言語体の文章と浮雲」