出典:青空文庫
俊寛云いけるは……神明外になし。唯我等が一念なり。……唯仏法を修行して、今度生死を出で給うべし。源平盛衰記いとど思いの深くなれば、かくぞ思いつづけける。「見せばやな我を思わぬ友もがな磯のとまやの柴の庵を。」同上一・・・ 芥川竜之介 「俊寛」
・・・冬になると、北海道の奥地にいる労働者は島流しにされた俊寛のように、せめて内地の陸の見えるところへまでゞも行きたいと、海のある小樽、函館へ出てくるのだ。もう一度チヤツプリンを引き合いに出すが、「黄金狂」で、チヤツプリンは片方の靴を燃やしてしま・・・ 小林多喜二 「北海道の「俊寛」」
・・・「三浦右衛門の最後」「俊寛」等で武士道徳のしきたりよりも更に強い人間の生命への執着と生の力の強靭さというようなものをその原形において押し出している。風変りな俊寛は、鬼界ヶ島で鬼と化した謡曲文学の観念を吹きはらって、勇壮に鰤釣りを行い、耕作を・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・ 昔あれを読んだとき、忠直卿の人間真実の追究というふうに理解したけれど、その後「俊寛」を読んで忠直卿の基礎は常識であると理解した。「俊寛」にしろ謡曲ではああいう哀れな物語にはなっていない。すべての物語が鬼気せまるように書かれていた。けれ・・・ 宮本百合子 「“慰みの文学”」