出典:青空文庫
・・・ 我ら会員は相次いでナポレオン、孔子、ドストエフスキイ、ダアウィン、クレオパトラ、釈迦、デモステネス、ダンテ、千の利休等の心霊の消息を質問したり。しかれどもトック君は不幸にも詳細に答うることをなさず、かえってトック君自身に関する種々のゴ・・・ 芥川竜之介 「河童」
・・・はるばるこの国へ渡って来たのは、泥烏須ばかりではありません。孔子、孟子、荘子、――そのほか支那からは哲人たちが、何人もこの国へ渡って来ました。しかも当時はこの国が、まだ生まれたばかりだったのです。支那の哲人たちは道のほかにも、呉の国の絹だの・・・ 芥川竜之介 「神神の微笑」
・・・軸は狩野派が描いたらしい、伏羲文王周公孔子の四大聖人の画像だった。「惟皇たる上帝、宇宙の神聖、この宝香を聞いて、願くは降臨を賜え。――猶予未だ決せず、疑う所は神霊に質す。請う、皇愍を垂れて、速に吉凶を示し給え。」 そんな祭文が終って・・・ 芥川竜之介 「奇怪な再会」
・・・親のいうことにゃ、どこまでも逆らってならぬとは、孔子さまでもいっていないようだ。いくら親だからとて、その子の体まで親の料簡次第にしようというは無理じゃねいか、まして男女間の事は親の威光でも強いられないものと、神代の昔から、百里隔てて立ち話の・・・ 伊藤左千夫 「春の潮」
・・・「聖人になりたい、君子になりたい、慈悲の本尊になりたい、基督や釈迦や孔子のような人になりたい、真実にそうなりたい。しかしもし僕のこの不思議なる願が叶わないで以て、そうなるならば、僕は一向聖人にも神の子にもなりたくありません。「山林の・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・』『夷狄だ畜生だ、日本人ならよくきけ、君、君たらずといえども臣もって臣たらざるべからずというのが先王の教えだ、君、臣を使うに礼をもってし臣、君に事うるに忠をもってす、これが孔子の言葉だ、これこそ日の本の国体に適う教えだ、サアこれでも貴様は孟・・・ 国木田独歩 「初恋」
・・・で、紳士たる以上はせめてムダ金の拾万両も棄てて、小町の真筆のあなめあなめの歌、孔子様の讃が金で書いてある顔回の瓢、耶蘇の血が染みている十字架の切れ端などというものを買込んで、どんなものだいと反身になるのもマンザラ悪くはあるまいかも知らぬ。・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・、三度まで引給えど曾て切れざりしとよ、ヤイ、合点が行くか、藤四郎ほどの名作が、切れぬ筈も無く、我が君の怯れたまいたるわけも無けれど、皆是れ御最期までも吾が君の、世を思い、家を思い、臣下を思いたまいて、孔子が魯の国を去りかね玉いたる優しき御心・・・ 幸田露伴 「雪たたき」
・・・釈尊も、八十歳までのながいあいだ在世されたればこそ、仏日はかくも広大にかがやきわたるのであろう。孔子も、五十にして天命を知り、六十にして耳したがい、七十にして心の欲するところにしたがい矩をこえず、といった。老いるにしたがって、ますます識高く・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・全国の測量地図を完成した、趙州和尚は、六十歳から參禅修業を始め、二十年を経て漸く大悟徹底し、爾後四十年間、衆生を化度した、釈尊も八十歳までの長い間在世されたればこそ、仏日爾く広大に輝き渡るのであろう、孔子も五十にして天命を知り、六十にして耳・・・ 幸徳秋水 「死生」