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・・・梯の子十五、六ばかりを踏みて上れば、三十三天、夜摩天、兜率天、とうりてんなどいうあり、天人石あり、弥勒仏あり。また梯子を上りて五色の滝、大梵天、千手観音などいうを見る。難界が谷というは窟の中の淵ともいうべきものなるが、暗くしてその深さを知る・・・
幸田露伴
「知々夫紀行」
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・・・「弥勒に一度つれて行ってくれたまえ」 で、秋のある静かな日が選ばれた。私達は三里の道、小林君が毎日通って行ったその同じ道を静かにたどった。野には明るい日が照り、秋草が咲き、里川が静かに流れ、角のうどん屋では、かみさんがせっせとうどん・・・
田山花袋
「『田舎教師』について」