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・・・弁慶が、ちょうはん、熊坂ではなく、賽の目の口でも寄せようとしたのであろう。が、その女振を視て、口説いて、口を遁げられたやけ腹に、巫女の命とする秘密の箱を攫って我が家を遁げて帰らない。この奇略は、モスコオの退都に似ている。悪孫八が勝ち、無理が・・・
泉鏡花
「神鷺之巻」
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・・・ 昔は、川柳に、熊坂の脛のあたりで、みいん、みいん。で、薄の裾には、蟋蟀が鳴くばかり、幼児の目には鬼神のお松だ。 ぎょっとしたろう、首をすくめて、泣出しそうに、べそを掻いた。 その時姉が、並んで来たのを、衝と前へ出ると、ぴったり・・・
泉鏡花
「若菜のうち」