出典:青空文庫
・・・一番小さいのは榎実位で鬼貫の句にも「木にも似ずさても小さき榎実かな」とある。しかし榎実はくだものでないとすれば、小さいのは何であろうか。水菓子屋がかつてグースベリーだとかいうてくれたものは榎実よりも少し大きい位のものであったが、味は旨くもな・・・ 正岡子規 「くだもの」
・・・曰く其角を尋ね嵐雪を訪い素堂を倡い鬼貫に伴う、日々この四老に会してわずかに市城名利の域を離れ林園に遊び山水にうたげし酒を酌みて談笑し句を得ることはもっぱら不用意を貴ぶ、かくのごとくすること日々ある日また四老に会す、幽賞雅懐はじめのご・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・ 鬼貫はこの傾向に真面目な疑いを抱いた卓抜な何人かの芸術家たちのうちの一人で、「まことの外に俳諧なし」と思い定めた。「只心を深く入れて、姿ことばにかかわらぬこそこのましけれ」と考え、さは/\と蓮うごかす池の鯉行水の捨てど・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」