出典:青空文庫
魯迅の随筆に、「以前、私は情熱を傾けて支那の社会を攻撃した文章を書いた事がありましたけれども、それも、実は、やっぱりつまらないものでした。支那の社会は、私がそんなに躍起となって攻撃している事を、ちっとも知りやしなかったので・・・ 太宰治 「芸術ぎらい」
・・・という旅行記みたいな長編小説を発表した。その次には「新釈諸国噺」という短篇集を出版した。そうして、その次に、「惜別」という魯迅の日本留学時代の事を題材にした長篇と、「お伽草子」という短篇集を作り上げた。その時に死んでも、私は日本の作家として・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・ あなたの大好きな魯迅先生は、所謂「革命」に依る民衆の幸福の可能性を懐疑し、まず民衆の啓蒙に着眼しました。またかつて私たちの敬愛の的であった田舎親爺の大政治家レニンも、常に後輩に対し、「勉強せよ、勉強せよ、そして勉強せよ」と教えていた筈・・・ 太宰治 「返事」
魯迅伝から 小田嶽夫氏の「魯迅伝」を少しずつ読んでいる。いろいろと面白い。兄である魯迅と弟である周作人との間にある悲劇は、決して一朝一夕のものではないことを感じた。 魯迅は十三の年、可愛がってくれていた祖・・・ 宮本百合子 「兄と弟」
岩波文庫『魯迅選集』とパアル・バックの『分裂せる家』魯迅という作家が支那の一九二四・五年からの八九年間に亙る急激な社会的推移の間で、この作家の偉大な特質である人間的正義感と民族解放の慾求とをどう成長させたかと云う点で、こ・・・ 宮本百合子 「カレント・ブックス」
・・・また魯迅が中国の民衆生活に対して抱いた深い愛と洞察と期待とに共通なもののあることをも感じさせる。そして、これらの誠実な芸術家たちが、ゴーリキイはケーテより一つ年下であり、魯迅は十四歳若く、ほぼ共通な文化の世代を経て生き、たたかい、世界芸術の・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・の作者魯迅が没しました。写真の顔は芸術家らしくなかなか立派なところがあります。支那のゴーリキイといわれた由。この頃、パアル・バックというアメリカ人の女作家のひとの「母」「大地」など支那を描いた作品をよみました。芸術の現実によって中国のしんの・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
中国の書簡箋というものには、いつもケイがある。けれどもなぜケイがあるかは知らなかった。白文体について作人が書いている文章が「魯迅伝」に引用されている。「古文を用いますと、空っぽで内容はなくとも、八行の書簡箋はいっぱいに埋め・・・ 宮本百合子 「書簡箋」
・・・落華生という中国作家は魯迅ともちがう角度で中国の女性のめぐりあわせに対する非抵抗の底にある抵抗力のつよさを語っています。〔一九四七年八月〕 宮本百合子 「相当読み応えのあったものは?」
・・・は、単純に書かれた短いものであるが、中国の今日の作品から遠くおかれている読者に、魯迅の短篇や「阿Q正伝」に描かれている村の出来事や人物とは異った出来事、人物の活躍が、単純素朴な形で今日の中国の農村におこりつつあることを物語っている。 雑・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」