出典:青空文庫
・・・その人から英語を教わった。ウィルソンかだれかの読本を教わっていたが、楠さんはたぶん奨励の目的で将来の教案を立てて見せてくれた。パーレー万国史、クヮッケンボス文典などという書名を連ねた紙片に過ぎなかったが、それが恐ろしく幼い野心を燃え立たせた・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・今年のグラスゴーの科学者の大会でシンプソンとウィルソンと二人の学者が大議論をやったそうであるが、これはまさにこの化け物の正体に関する問題についてであった。結局はただ昔の化け物が名前と姿を変えただけの事である。 自然界の不思議・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・ロイドジョージとかウィルソンとかいう名前が目につく。そうかと思うと飛行機の通俗講義があったり探偵小説があったり、ヘッケルの「宇宙のなぞ」の英訳の安値版がころがっていたりする。この露店の所へ来ると自分の頭が急に混雑してあまり愉快でない一種の圧・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・各国家民族が自己を越えて一つの世界を構成すると云うことは、ウィルソン国際連盟に於ての如く、単に各民族を平等に、その独立を認めるという如き所謂民族自決主義ではない。そういう世界は、十八世紀的な抽象的世界理念に過ぎない。かかる理念によって現実の・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・第一次大戦後、平和のための国際連盟にアメリカが、最大の能力をもちながら加入しなかったことは、当時の大統領ウィルソンの苦衷ばかりではなかった。世界の資本主義経済の網目のなかで、アメリカの富が次第にその国にとって持ちおもりのするものとなりつつあ・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」