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・・・雄鳩は思いがけない歓びで、「クックウ、クックウ」と喉を鳴らした。そこには妻が自分を見ていたのであった。「クックウー、ゴロッホー、ゴロッホー」 溢れ噎ぶ思いで、雄鳩は雌に挨拶した。雌は彼のする通り、熱した目で凝っと彼を見た。美・・・
宮本百合子
「白い翼」
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・・・ トラファルガア広場のトーマス・クック本店横から二台の大型遊覧自動車が午後七時の薄暮をついて動き出した。 トーマス・クック会社名前入りの制帽をかぶった肥っちょの案内人が坐席から立ち上って「ここがオックスフォード通。只今通りすぎつ・・・
宮本百合子
「ロンドン一九二九年」