出典:青空文庫
・・・ スウィフトは発狂する少し前に、梢だけ枯れた木を見ながら、「おれはあの木とよく似ている。頭から先に参るのだ」と呟いたことがあるそうである。この逸話は思い出す度にいつも戦慄を伝えずには置かない。わたしはスウィフトほど頭の好い一代の鬼才に生・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・その権力の行為にはどんなスウィフトも描き出さなかった諷刺の対象があり、ルネッサンスのシェクスピアのヒューマニズムでは予見さえされなかった悲劇と笑劇のテーマがある。 わたしたちは、ほかならぬこの日本の土地に生れ、そこに生き、汗と涙と時たま・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・十八世紀のイギリスで、当時の上・中流社会人のしかつめらしい紳士淑女気質への嘲笑、旧き権威とその偽善への挑戦として、スウィフトの「ガリバア旅行記」が書かれた。その国で、諷刺文学がどんな形式と内容とをもって発展してきているかということは、意味ふ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」