出典:青空文庫
・・・一体芸術家には、トルストイのように、その人がどう人生を見ているかに興味のある人と、フローベールのように、その人がどう芸術を見ているかに興味のある人と二とおりあるらしい。菊池なぞは勿論、前者に属すべき芸術家で、その意味では人生のための芸術とい・・・ 芥川竜之介 「合理的、同時に多量の人間味」
・・・顔は百合の花のような血の気のない顔、頭の毛は喪のベールのような黒い髪、しかして罌粟のような赤い毛の帽子をかぶっていました。奥さんは聖ヨハネの祭日にむすめに着せようとして、美しい前掛けを縫っていました。むすめはお母さんの足もとの床の上にすわっ・・・ 著:ストリンドベリアウグスト 訳:有島武郎 「真夏の夢」
・・・ 十六 ある夜の出来事 ゲーブルとコルベールの「ある夜の出来事」は、いかにもアメリカ映画らしい一種特別なおもしろみをもっている。この映画の中で、自分の座席の付近の観客、ことに婦人の観客がさもおもしろそうにおかしそうに・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・でコルベールがいう一寸した科白を、ある日本の作家が女性の洗練された話術の感覚の見本としてほめていたが、果してそれをすぐコルベールの身についたものということが出来るだろうか。有名だった「夢見る唇」の中でベルクナアが妻を演じて、苦しいその心のあ・・・ 宮本百合子 「映画女優の知性」
・・・彼はそのとき、アメリカの作家としてスタインベック、フランス古典第一位にバルザック、つづいてフローベール、モーパッサン、スタンダール、メリメ、マルセル・プルーストらの名をあげた。バルザック研究がソヴェトの学者グリフツォフ博士によって行われてい・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・稲本錠之助弁護人は、フランス大革命当時の哲学者ジョセフ・ジューベールの言葉をひいて弁論した。「一体この事件がランプの光の前で検討されたものならばまだしも、今朝来被告人等の言うことをきいておりますと、ランプの光にも行かない。螢の光ぐらい。私は・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・ こういう宗教的トルストイの考え方と、自然主義の人々或いは二十世紀初期のある種の唯物論者、たとえばイギリスの作家バーナード・ショウなどは、恋愛、結婚、家庭生活などにつきものの、ベールをすっかり剥ぎ取って、全く生物学的な解釈だけに立った。・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」