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・・・ ところでその金屏風の絵が、極彩色の狩野の何某在銘で、玄宗皇帝が同じ榻子に、楊貴妃ともたれ合って、笛を吹いている処だから余程可笑しい。 それは次のような場合であった。 客が、加賀国山代温泉のこの近江屋へ着いたのは、当日午少し下る・・・
泉鏡花
「みさごの鮨」
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・・・可愛く若い福島屋の細君が、「――鶴の枕でも、御覧になりませんか、何でも、楊貴妃が使ったものなんでございますって。頭をのっけると鶴の鳴声が致しますんだそうです」 頼山陽が、その鶴の枕を鳴して見て、出来た詩がその家の宝になって有る由。・・・
宮本百合子
「長崎の印象」