・・・ 二 書生の恥じるのを欣んだ同船の客の喝采は如何に俗悪を極めていたか! 三 益軒の知らぬ新時代の精神は年少の書生の放論の中にも如何に溌溂と鼓動していたか! 或弁護 或新時代の評論家は「蝟集する」と云う意味に「門前・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・ ――戦死者中福井丸の広瀬中佐および杉野兵曹長の最後はすこぶる壮烈にして、同船の投錨せんとするや、杉野兵曹長は爆発薬を点火するため船艙におりし時、敵の魚形水雷命中したるをもって、ついに戦死せるもののごとく、広瀬中佐は乗員をボートに乗り移・・・ 国木田独歩 「号外」
・・・ もう一つ私たちが大変不思議に感じて驚いた事は、その事件の細かく報道せられている、同じ夕刊にのっている同船の名士たちが記者のインタビューに際して、それぞれに世界情勢、国際情勢を語りながら自分の乗って来たその船で、自分達の娯楽して来たサロ・・・ 宮本百合子 「龍田丸の中毒事件」
・・・それを護送するのは、京都町奉行の配下にいる同心で、この同心は罪人の親類の中で、おも立った一人を大阪まで同船させることを許す慣例であった。これは上へ通った事ではないが、いわゆる大目に見るのであった、黙許であった。 当時遠島を申し渡された罪・・・ 森鴎外 「高瀬舟」
出典:青空文庫