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RSS英語版と日本語版の内容が違う、それこそ「島国根性」では 国会事故調報告
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本日の言葉「insularity」(島国根性、閉鎖性)
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RSS 「Made in Japan」で済ませていいのか


報告書について英語報道の多くは、日本語版にもあった「man-made disaster(人災)」という説明に着目していました。東電が事故をあくまでも「想定外の」津波のせいにしようとしたこと、官邸と東電本社の情報交換が破綻していたことなど、報告書の中心をなす部分も取り上げています。委員会が個人の責任追及をしないことにも触れ、英語版にしかない「Made in Japan」や「Japanese culture」の部分にも言及しています。たとえば英BBCのこちらや、米CNNのこちら米紙『ニューヨーク・タイムズ』のこちらなどがそうです。「日本文化もしくは国民性に起因する事故だった」という報告書の解釈は、広く世界をめぐったと言えるでしょう。

そして「福島第一原発事故は、日本文化ないしは国民性が原因の、日本製の事故だった」という英語版のこの結論については、複数の批判が英語メディアに載りました。たとえば米ブルームバーグは社説で、原因が「Japanese culture」だと言うのは「個人個人の犯人を巧みに無罪放免にしたに等しい。報告書の結論や提言は、起訴や処罰の話を避けている」とも。そして、福島の事故が「文化的な失態」だったという結論は、報告書の最大の欠点だと批判しています。

ブルームバーグ社説はこうも書きます。福島第一原発の危険性については複数の日本人がたびたび警告していたし、「物事を日本の『集団主義』のせいにして『この事故に責任を負う人々と同じ立場にほかの日本人がいたとしても、結果は同じだったかもしれない』と言うのは言い逃れであり、陳腐なお約束だ。業界利益を守る身内同士のつながりで、安全基準がきちんと守られていないのは、決して日本だけではない」と。そしてその例として、2006年に米ウエストバージニア州で起きたセーゴ炭鉱爆発事故に言及しています。

『フィナンシャル・タイムズ』では米コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授が「Stop blaming Fukushima on Japan’s culture(福島の事故を日本文化のせいにするのはもう止めろ)」という文章を寄稿し、メイド・イン・ジャパンや日本文化云々について「私はそうは思わない」と反論しています。もし菅直人氏が東電本社に乗り込まなかったら、もっとひどいことになっていたかもしれないし、もし東電の社長がもっと有能だったら、官邸ともっときちんと情報交換できていたかもしれないと。「People matter(人間は大事だ)」とカーティス教授は続けます。たとえば「福島の事故の英雄のひとりは、原子炉冷却に海水を使うなという命令に背いた、発電所の吉田昌郎所長だった」ではないかと。

そしてカーティス教授はさらに「文化のせいだと言うのは、究極の責任逃れだ。もし文化で行動が説明できるなら、誰も責任をとらなくてよいことになる。(中略)文化では福島の事故は説明できない。人間は自発的に選択できる力がある。問題になるのは、何をどう選択するかであって、どういう文化的文脈で選択するかではない。権威への服従がそれほど日本に深く根ざす特徴だというなら、いったいどうやって複数の日本人が集まって、権威を問いただすだけでなく激しく非難する報告書が書けたというのか?」と続け、「もっともらしい文化論は見かけ倒しだ」とバッサリ切り捨てています。

『フィナンシャル・タイムズ』ではディッキー東京支局長も、「Beware post-crisis ‘Made in Japan’ labels」 という解説記事で、報告書を批判しています(全文をこちら「震災後の『メイド・イン・ジャパン』レッテルにご注意」で訳してあります)。

「福島第一原発の事故を文化的な文脈で説明しようとするのは、本当に危険だ。国民文化(国民性)を説明したり定義したりすること自体、そもそも難しいのだし。(中略)黒川氏の委員会が取り上げた問題の多く、たとえば最悪のシナリオに向けて準備できない組織的な欠陥や、業界と規制当局の癒着、独立したマスコミ監督機関の不在などは、世界中あちこちで見受けられる。こうした問題はむしろ途上国で顕著で、新設中の原子炉61基のほとんどは途上国に立地するのだ。たとえば汚職が横行しマスコミは中国共産党の検閲にさらされている中国では、原子炉数十基の新設を予定している。中国やインドやその他の国の政策決定者が、福島第一のような事故は日本でしか起こりえないなどという教訓を得たりしたら、こんなに危いことはない」とディッキー記者は書いています。

加えてディッキー記者は、日本語版と英語版が違うことにも注目。「今回の報告書で黒川氏はかつてないほど自分の国を批判した。しかしそれは報告書の英語版のみでのことだった。日本語版に書いた前書きはもっと抑制的で、日本文化そのものというより年功序列や終身雇用といった現象によって作られたマインドセット(思い込み)が事故につながったと批判している。日本語版と英語版のこの違いを批判された黒川氏は6日、違う読者層に向けて報告書のメッセージに手を入れるのは特に問題ないと反論した。けれども黒川氏はかねてから『外圧』が日本の変化を後押ししてくれると信じており、自分がこうした判断を下すことで外国にいっそう厳しく注視してもらおうと願っているのは明らかだ」と書いています。

私が見た限り、この英語版と日本語版の違いを問題視した記者はそれほどいなくて、たとえば『ニューヨーク・タイムズ』記事では、「Made in Japan」云々が英語版の前書きにあったと説明し、「日本語版にも同じような批判があった」とのみ触れてあります。「Made in Japan」のくだりが日本語にはないと指摘する英紙『ガーディアン』に掲載されたこちらは、ガーディアン記者による取材記事ではなく、在英日本人研究者の方が同紙に寄稿したものでした。

ディッキー記者が上で書いている「黒川氏は6日」というのは、国会事故調の黒川清委員長が東京の日本外国特派員協会で行った記者会見のことです。会見で、英語版と日本語版がなぜ違うのか黒川氏に質問したのも、ディッキー記者でした。やりとりは朝日新聞も7日付で記事にしています。

会見の様子はインターネット上で見られます。そこで黒川委員長は、英語版は世界向けに作ったもので、日本語版は日本人向けのものだと説明しているほか、英語版前書きはネイティブ編集者やライターと作業して作ったもので、日本語とかなり違うがとても気に入っていると話していました。そして、「でも(英語版で)書いた通りのことを日本人に向けて書いて、日本人は理解すると思いますか?」とディッキー記者に逆質問していました。


加藤祐子

執筆者:加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」の洗礼を受け、イギリス英語も体得。怪しい関西弁も少しできる。全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイト「CNN.co.jp」で 2000年と2004年米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。フィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。最新の訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」(朝日新聞出版)。



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