[動ワ五(ハ四)]

言葉を口に出す。心に思っていること、考え・判断などを相手伝達するために、言葉に出したり、文章に表したりする。
  1. 口を通して言葉として出す。「やっと片言を—・うようになった」

  1. 言葉にして表す。思うことを言葉で表現する。「文句を—・う」「だれもが彼のことをよく—・わない」「これ以上—・うことはない」「出席できない旨を手紙で—・ってきた」

  1. 名づける。称する。…と呼ぶ。「一一月三日を文化の日と—・う」

  1. 世間の人がそのように称する。一般にそう呼ばれている。「縁起がいいと—・われる大安の日」「彼は無類の好人物と—・われている」

  1. 何らかの声や言葉を発する。「わあと—・って泣き出した」

  1. 動物などが声を出す。物が音を発する。音を立てる。「犬がわんわん—・う」「鉄瓶がちんちん—・う」「床がみしみし—・う」

実質的な意味が弱まったり、なくなったりして、常に他の語に付いて用いられる。
  1. (「…という」の形で体言に続けて)

    1. 同格であることを示す。「ハイジと—・う少女」「世界の中のアメリカと—・う国」「人事部と—・う部署

    2. ㋑「と」の前の事柄を特に取り立てて示して、意味を強める。「人と—・うものはわからないものだ」「おまえと—・うやつは何とひどい人間なのだ」

    3. 数量を表す語に付いて、その意味を強める。…に相当する。「何十万と—・うイナゴの大群

    4. ㋓同じ名詞を前後に置いて、それに属するものはすべて、または、その語を強める意を表す。「入り口と—・う入り口は閉鎖された」「店と—・う店はどこも休んでいた」「今日と—・う今日はがまんできない」「特に用事と—・う用事でもないが」

  1. (「…というと」「…といえば」「…といい…といい」などの形で)話題として取り上げて示す。「今いちばんおもしろい映画と—・えば何でしょう」「大きさと—・い、値段と—・い、ちょうど手ごろだ」

  1. 副詞「こう」「そう」「ああ」「どう」に「いう」「いった」が付いた形で体言に続けて、…のような、…の類の、の意を表す。「ああ—・う場所には近づくな」

  1. 代名詞「これ」「どこ」「なに」に「という」「といった」などが付いた形で、あとに打消しの語句を伴って、特に取り立てて言うほどの…がない意を表す。「これと—・う欠点もない」「これと—・った趣味がない」「どこと—・ってからだに悪いところはない」

  1. (「…という」「…ということだ」などの形で)話の内容直接でなく他からの情報にもとづくことを表す。「気象庁の長期予報によると、今年の冬は寒いと—・う」「病状は峠を越したと—・うことなので安心した」

  1. (「…といっても」「…とはいえ」「…とはいうものの」などの形で)事実は…であると認められるが、しかし…である(でない)意を表す。…であっても。「春と—・っても風はまだ冷たい」「失敗したとは—・え、悲観はしていない」

  1. 接続助詞「から」に「といって」が付いた形で、あとに打消しの語句を伴って、そのような条件理由であっても必ずしも…でない、の意を表す。「対戦相手が弱いからと—・ってあなどってはいけない」

  1. (「…といったらない」の形で)程度が、これ以上に…なことはない、極めて…だ、の意を表す。「病弱な上に、年はとるし、心細いと—・ったらない」

  1. (「そうかといって」「かといって」「といって」などの形で)本心としては拒みたいが、拒むのもまずいという意を表す。「ごちそうしてもらう筋合いではないが、そうかと—・って割り勘というのも不都合だ」

  1. 詩吟を吟ずる。

    1. 漢詩 (からうた) 、声あげて—・ひけり」〈土佐

  1. 求愛する。言い寄る。

    1. 「いとねむごろに—・ひける人に、こよひあはむと契りたりけるに」〈伊勢・二四〉

[補説]3の、「こういう」「そういう」「ああいう」「どういう」はまとまった一語として連体詞と考える。
[可能]いえる
[用法]いう・[用法]はなす——「言う」は「独り言を言う」「言うに言われない」のように、相手有無にかかわらず言葉を口にする意で用いるほかに、「日本という国」「こういうようにやればうまく行くというわけだ」など引用的表現にまで及ぶ。◇「話す」は「しゃべる」とともに、「喫茶店で友達と話す」「電話近況を話す」のように、相手がいる場での言葉の伝達である。「話し方教室」とはいうが、「言い方教室」とはいわない。◇類似の語に「述べる」「語る」があるが、ともにまとまった内容筋道を立てて発言する意の語であり、「意見を述べる」「紙上で述べる」のように用いたり、「物語」「義太夫語り」のような熟語を生んだりする。

出典:青空文庫

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