・・・男の小指にはダイアモンドが光っているのに、連の女性は、水色格子木綿の単純な服で、飾花だけぱっと華やかな帽子をつけている。白粉が生毛にとまっているのも見える。まあ金がないというだけの理由でかまわない装をやむなくしている女に思える。連の男が、と・・・ 宮本百合子 「三鞭酒」
・・・フイリッポフ信仰よりパンが欲しい。ダイアモンド八〇〇円に売ルその男〔欄外に〕 ロシア人の気違いになった細君を病院へ入れるためにフイリッポフ手紙を書く。 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・ 暗の中に輝くダイアモンドの様に、鋭く青いキラメキをなげるものがあれば、静かに、おだやかに、夢の花の様に流れる。 一瞬の間も止まる事なく、上品に、優美に雲の群は微風に運ばれて、無窮の変化に身をまかせるのである。けれ共、紅の日輪が全く・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・金モール内職のベットがマルヌッフのサロンでは、俄然ダイアモンドのような輝きを発揮しはじめたり、奇怪な老婆がいきなり登場したり、ユロ将軍の最後の条などは、明らかに前章に比してなげやりに片づけられている。つき進んで云えば、従妹ベットの心持が、あ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫