・・・即ちそれを通じてのみ、古典美への信仰に入ることが出来、「科学的認識は芸術的享楽の中枢に参画する」ことが出来るとしているところが違うと云えば云える。しかし、歴史の光に照して見れば、後退的な「素朴な実証」主義の合理化、憧憬は、小林氏の心持をもつ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ことと、子供に「社会の中枢に立って立派に働いてもらいたい」心持とを、いつの間にやらごったにしている。この混同は作者によって計画的にとりあげられているのではなく、作者の内部に在るものが寧ろ自然発生的に作品の裡にその反映を見せているのである。・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・社会的に最も身分の低いものとされ、斬り捨て御免の立場に置かれ、しかも経済の中枢では権力者の咽喉元を握っていた商人達は、自分の意思、自分の権力を、ほかのどこに示すことが出来たろう。結局物質的な実力を誇るしかなかったし、その一つの示威運動として・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・予は僅に二三の京阪の新聞紙を読んで、国の中枢の崇重しもてはやす所の文章の何人の手に成るかを窺い知るに過ぎぬので、譬えば簾を隔てて美人を見るが如くである。新聞紙の伝うる所に依れば、先ず博文館の太陽が中天に君臨して、樗牛が海内文学の柄を把って居・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
出典:青空文庫