・・・ もっとも鐘馗様がお笑い遊ばしちゃあ、鬼が恐がりはいたしますまい、私どもが申せば活如来、新聞屋さんがおっしゃればその予言者、活如来様や予言者殿の、その鼻ッつきがああだとあっては、根ッから難有味がございませんもの、売ものに咲いた花でござい・・・ 泉鏡花 「政談十二社」
・・・倚掛らせますのには、しっかりなすって、自分でお雪さんが頼母しがるような方でなくっちゃ可けますまい、それですのにちょいちょいお見えなさいまする、どのお客様も、お止し遊ばせば可いのに、お妖怪と云えば先方で怖がります、田舎の意気地無しばかり、俺は・・・ 泉鏡花 「湯女の魂」
・・・死減一等の連中を地方監獄に送る途中警護の仰山さ、始終短銃を囚徒の頭に差つけるなぞ、――その恐がりようもあまりひどいではないか。幸徳らはさぞ笑っているであろう。何十万の陸軍、何万トンの海軍、幾万の警察力を擁する堂々たる明治政府を以てして、数う・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
出典:青空文庫