・・・ 日本の歴史は、惨憺たる進歩性の敗退の跡を示している。明治維新によって、名目上の民権が認められ、新しい日本を建設しようという希望に燃えた一団の人々は明治十四年自由党を結成した。有名な中島湘煙が十九歳で政談演説を行い、婦人政治家として全国・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・はあわれな歴史をもっている。明治維新の混沌期にもしフェノロサがいなかったら、当時の日本政府は価値のある過去の美術作品を外国美術館でしか見ることの出来ないものにしてしまっただろう。よそから教えられた日本美術の価値におどろいて、「国宝」をこしら・・・ 宮本百合子 「国宝」
・・・しかも政治の激動期に、朱子学が或る役割を持っていたことなどから、漢詩が伝統の文学の形式から、直接の日常の感情表現の手段となって行った。明治維新というものがその一面に下級武士の大きい力のあらわれをもっているという事実が、こういう点にも見られる・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・フランス、イギリスその他ヨーロッパ諸国のとおり、日本も明治維新によって、ブルジョア革命を完成しきった近代市民社会になっているのか、あるいはそうでないかという点について、大論争が行われていた。山川均を中心とする労農派は、明治維新によって日本の・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・熱情的な農民等が、明治維新によって目醒された自由平等の理想に鼓舞されて、延びよう延びようとする鋭気を、事々に「お上」の法によって制せられ、幻滅を感じるが如何うにかして新生活を開拓しようと努めた跡が、ありありと見える。このむきな人々が、僅か三・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・この事実は明治維新に影響し、今日の日本の民主化の問題に重大な関係をもっているのである。 武家時代に入ってからの婦人の生活というものは実にヘレネ以上の惨憺たるものであった。女性は美しければ美しいほど人質として悲惨だった。人質としてとられ、・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・この小さい日本近代史を中心として、私たちは巻末にあげられている参考文献表の中から、「明治維新」や「新日本史」などを選び出して読むことが出来るし、日本評論社が出版した「明治文化全集」も折々の有益な資料として記憶しておくことは便利であろう。・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・ ブルジョア民主主義の達成が眼目ではあるけれども、その歴史的担当者であるブルジョアジーというものは、日本ではヨーロッパ諸国のブルジョアジーとまったく違った経歴をもってきています。明治維新に新しい権力者となった封建領主、下級武士たちが半封・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・が一九三二年の封建的軍事的絶対主義日本における階級闘争が帝国主義戦争によって一層切迫した現段階において、特に近づきつつある人民革命の歴史的意義を規定する明治維新から取材し現実の闘争のもっとも必要なモメントとして描かるべき歴史小説としては、方・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・ 日本では明治維新以来次第に銀行資本と産業資本の結合した独占資本の形は発達したが、生産の格式はおくれた半封建の中小企業を基礎とし、軽工業を基礎とし、植民地賃銀といわれる低賃銀で男女の勤労者を働かして来た。土地の関係も徳川時代と変りない地・・・ 宮本百合子 「三つの民主主義」
出典:青空文庫