・・・は困るな、勉強が足らんのだよと嘲笑され、頭をかきながら引き下って読んでいるうちに、何だか面白くないが立派なものらしいという一種の結晶作用が起って、判らぬままに模倣して、第二の志賀直哉たらんとする亜流が続出するのである。「暗夜行路」の文章をお・・・ 織田作之助 「大阪の可能性」
・・・ 映画が物を言うというノヴェルティに対する好奇心はほんのわずかの間に消え去ってしまうとともにあらゆる困難が続出して来て、映画芸術は高い山から谷底へ顛落した。そうしてその第一歩からもう一ぺん新しく踏み出さなければならないことになってしまっ・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ 世の中が妙に騒々しくて、青いX事件があるかと思うと黒いY事件、黄色いZ事件などが続出する。ある人はこれを社会経済状態の欠陥のせいだと信じ、またある人は唯物論的思想の流行による国民精神の廃頽のせいだと思い込む。しかしこれらの動揺の真因は・・・ 寺田寅彦 「猫の穴掘り」
・・・に、世間を思わせるほど博士に価値を賦与したならば、学問は少数の博士の専有物となって、僅かな学者的貴族が、学権を掌握し尽すに至ると共に、選に洩れたる他は全く一般から閑却されるの結果として、厭うべき弊害の続出せん事を余は切に憂うるものである。余・・・ 夏目漱石 「博士問題の成行」
・・・家はこの頃病人続出でね、スエ子は大腸カタルがひどくなりかけて目下慶応入院中です。然しずっと経過はよくて、発病後一週間ばかりですが、却って私を追いこし、もう外出出来るしすぐ退院いたします。私も、もう数日後には面会に出かけます。本当に御心配下さ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・これは、ジェスチュアの多い、勇ましい、そしてわかりやすい文章の続出という時代的な潮流に或る刺戟をうけつつ、その傾向とは異って、学問的に解決して行こうとする努力を示しているのである。 作家では山本有三氏、歴史家では羽仁五郎氏などが、文化に・・・ 宮本百合子 「今日の文章」
・・・戦後、続出した新興出版事業者は、ほとんど例外なしに、この敗戦おきみやげたる紙の操作によって出発した。これらの事実については火野葦平のみならず、軍と「民間」との消息に通じた多くの人がもとより無智であろうはずはなかった。 まったく、「バクロ・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・ ところで、知識人をこめた一般の読者は上述のような幾種類かの何々文学の続出に対して果して満足していただろうか。知識人は生産文学が示したような人間生活と精神の単純化には、何と云っても耐え得ないものを持っている。何かの理想を求め、主張をたず・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫