・・・二十四時間を、八時間から九時間以上職場にしばられ、千八百円でしめつけられつつ家族の生活をみている正直な勤労者の青春にとって、きょうの猟奇小説と、ロシアの人民が暗黒のなかに生を苦しんでいた時代のドストイェフスキーの世界は、何を与えるだろう。し・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・例えば、ソヴェト同盟の五ヵ年計画のはじめにされた職場の酔っぱらい排撃、官僚主義排撃のような主題だ。それは相当うまく行った。 ところが、そういう社会的現象をみんなひっくるめて、プロレタリアート独裁下のソヴェト生活という風な大主題を扱おうと・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・女は家庭にかえれと、職場を失った。大部分が戦災をうけ、親を失っている。淫売によって生きなければならない若い女の暮しぶりが、まるで民主日本のシムボルであるかのように描かれ、うつされ、ゴシップされている。 性の解放がジャーナリズムの上に誇張・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ 男女が平等ということは、同じ労働に対し同じ賃金ということを当然約束しているけれども、これまでの日本の実状では、同じ職場で同じ部門に働いている男女が必ずしも同じ程度の腕をもっているとは云えない。女は、これまでじきやめてしまうもの、やすい・・・ 宮本百合子 「いのちの使われかた」
・・・彼女はこの裁縫工場へ管理者として派遣されてから、新しい三つの職場を殖し、作業を機械化し、三百人の労働者を増す程、生産を拡大した。何故、自分は新しいソヴェト型を、自分達の工場で使おうとするか? 生産の量だけを増し、安くするだけが新しい文化の向・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・ デモが各々の職場で工場内の美術研究部を中心として、工夫をこらした飾りものを持ち出すばかりではない。今日赤い広場はみちがえるような光景である。 普請中のレーニン廟の数町に渡る板がこいは、あでやかな壁画で被われている。 集団農場の・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・組合が求めている職場の婦人の要求ほど女らしい公然たる要求がどこにあるだろうか。すべての主婦、学生のために勤労婦人こそトップに立ってそれを求めている。女らしさのゆえにこそ、婦人たる性を愛し尊ぶからこそ、今日婦人は立っている。そのことを、ひとも・・・ 宮本百合子 「「女らしさ」とは」
・・・一九三三年の夏、わたしは、幾度か荏原の労働者地区にあった無産者托児所へゆきそのぐるりのお母さんたちの生活にふれた。職場の人々との会合の、字では書いておくことのできなかった記録を整理した。そして八九十枚まで、小説としてかきはじめた。 とこ・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・ これらの作品は、非常に複雑で熱い意欲をたくみに圧縮しつつ心を打つ力をもっていると思われますし、別な例では、ようやく終った所長の訓示ヒヤカシ半分に拍手浴びせワッと喊声あげて職場へ引き上げる。など、この・・・ 宮本百合子 「歌集『集団行進』に寄せて」
・・・ 二十人ばかりの職場からの若い連中が集っているのだが、椅子が人数だけない。山羊皮の半外套を着た若い労働者が三四人、床の上でじかに膝を抱え、むき出しな板の羽目へよっかかっている。 四十がらみの、ルバーシカの上へ黒い上衣を着た男が立って・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
出典:青空文庫