・・・ 特別にこの夜のために脚本が選定されるということはない。平常から各劇場の上演目録は特別の統制機関によって選ばれている。 いつもその時ソヴェトの全勤労者がおかれている社会的情勢、細かく云えば党と職業組合との決定した線にそうて新らしい脚・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
先日は脚本をわざわざまことに有難うございました。あれから丁度林町に出かけるところであったので、途中電車のさわがしさも忘れて拝見し始め、二三日うちにすっかり拝見致しました。いろいろの事を感じたので、早速、手紙を差上げたいと思・・・ 宮本百合子 「大橋房子様へ」
・・・と云う芝居は脚本の根本に、何かお絹なりお君なりを、充分活かし切らないものがあったのではないかと思う。 お絹、林之助、お里、小女お君の四人にからんで、筋は情緒的に、生々しく発展すべき性質のものだ。そこへ人間の数が殖えすぎ、筋は、皆、傍の人・・・ 宮本百合子 「気むずかしやの見物」
・・・ そして、友代の成功であの芝居が真情的なものに貫かれていたとも云えそうなところに脚本としていろいろ興味ある問題がひそんでいるのではないだろうか。 小説として書かれた「建設の明暗」では友代という女の活動性が謂わば時流にあった形での・・・ 宮本百合子 「「建設の明暗」の印象」
・・・これらの民族の国立劇団が、自分たちの地方の生産、これを中心として行われる階級闘争を主題にした脚本をもって、やって来た。そして、幼稚であるにしても特色のある演技で大衆的喝采を博した。 然し、いずれにしろ広大なソヴェト同盟だ。辺土地方には、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・軍時に、ソヴェト軍隊と、交戦中の敵国住民大衆にアッピールするものと仮定したパンフレット、それにはクラブ用の小脚本、レヴュー台本、プラカート用の詩、スローガンなどを盛りこんだパンフレットの発行である。 軍事状態の中にあって各自の文学的政治・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ それは日出新聞社から頼まれている応募脚本であった。 日出新聞社が懸賞で脚本を募ったとき、木村は選者になった。木村は息も衝けない程用事を持っている。応募脚本を読んでいる時間はない。そんな時間を拵えるとすれば、それは烟草休の暇をそれに・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・ そういう工合に、自然主義退治の火が偶然社会主義退治の風であおられると同時に、自然主義の側で禁止せられる出板物の範囲が次第に広がって来て、もう小説ばかりではなくなった。脚本も禁止せられる。抒情詩も禁止せられる。論文も禁止せられる。外国も・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
・・・或時僕が脚本の試みをしているのを見てこんな事を言った。「どうもあなたのお書きになるものは少し勝手が違っています。ちょいちょい芝居を御覧になったら好いでしょう」これは親切に言ってくれたのであるが、こっちが却ってその勝手を破壊しようと思っている・・・ 森鴎外 「百物語」
・・・自由恋愛が作品に現われたことがあるとしても、それは一時西洋で姦通小説だの、姦通脚本だのというものが問題になっていたと同じことで、真の芸術の消長には大した影響はない。 近ごろは自然主義ということが話題に上ることが少なくなって、その代りに個・・・ 森鴎外 「文芸の主義」
出典:青空文庫