・・・でそんなものでも買う人々の暮しは、現実にはその台所の戸棚に相当な食糧の補充も蓄えられている人々のことである。そもそものれんの発祥した庶民の暮しは、同じ荒っぽさに一きわむき出されているのだが、そういう生活の中では、一山いくらと札の立っている瀬・・・ 宮本百合子 「生活のなかにある美について」
・・・という言葉としてもあらわれている。坂井徳三が専門作家の「見本をみることができない」「やはり民主的な専門作家たちの作品の影響力がまだまだ少い」と補充している点にもうかがわれる。 だいたい、文学に、そっくりそのままを見ならったり、模倣したり・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・その政治の貧困さを補充してゆくためには、民主的な政治そのものの具体的な成熟が期待されると同時に、文学は文学の側から自身の独自性のうちにより人間らしい政治性を豊富に発育させ、政治の多面性を証拠だてても行かなければならない。それは作家の資格にお・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・的な勤労に従う男女はどれだけの食餌、どれだけの休養、どれだけの文化衛生費を必要とするか、客観的な標準を立てて、さておのおのの収入総額によってどれだけの不足がどの部分に生じているか、それは今日どんな形で補充されているか、本来ならばこの方法によ・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・石田は平生天狗を呑んでいて、これならどんな田舎に行軍をしても、補充の出来ない事はないと云っている。偶には上等の葉巻を呑む。そして友達と雑談をするとき、「小説家なんぞは物を知らない、金剛石入の指環を嵌めた金持の主人公に Manila を呑ませ・・・ 森鴎外 「鶏」
出典:青空文庫