・・・例えば明石なら明石に医学博士が開業する、片方に医学士があるとする。そうすると医学博士の方へ行くでしょう。いくら手を叩いたって仕方がない、ごまかされるのです。内情を御話すれば博士の研究の多くは針の先きで井戸を掘るような仕事をするのです。深いこ・・・ 夏目漱石 「道楽と職業」
・・・可憐なる彼ら――可憐は取消そう二人とも可憐という柄ではない――エー不憫なる――憫然なる彼らはあくまでも困難と奮戦しようという決心でついに下宿を開業した。その開業したての煙の出ているところへ我輩は飛び込んだのである。飛び込んでからだんだん事情・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・ わずかに医学の初歩を学び得るときは、あるいは官途に奉職し、あるいは開業して病家に奔走し、奉職、開業、必ずしも医士の本意に非ざるも、糊口の道なきをいかんせん。口を糊せんとすれば、学を脩むるの閑なし、学を脩めんとすれば、口を糊するを得ず。・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
時 一九二〇年代処 盛岡市郊外人物 爾薩待 正 開業したての植物医師ペンキ屋徒弟農民 一農民 二農民 三農民 四農民 五農民 六幕あく。粗末なバラ・・・ 宮沢賢治 「植物医師」
・・・ べこべこ三味線 お座つき香に迷うがすんだら 都々逸 下諏訪らしい広告 御待合開業 今回各位の御同情により二月十八日より 御待合並にうどん店 開業致し親切丁寧を旨として大勉強仕候間御引立の・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・その時分、一番早く一本だちになって開業した女医さんである一人の仲間が、そういう場合、よくみんなのために尽力した。 十年が経ってゆくうちに、或るひとは結婚し、或る人は専門の職業で確立し、或るひとは更にこれまでの職業から、個性のより大きく生・・・ 宮本百合子 「図書館」
・・・山岸敬明が輪タクを開業するとき十万円ほどの資本を出して株主となったのがもとの賀陽宮、いまの賀陽恒憲だったそうです。 荒物店でもひらくなら十万円という金はもとの千円として何かの役にたつでしょう。けれども輪タク一台いくらすると思って? 田舎・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
・・・ 御待合開業 今回各位の御同情により三月一日より 御待合並にうどん店 開業いたし親切丁寧を旨として大勉強仕候間御引立の程願上候 うどん/きそば御待合入仙・・・ 宮本百合子 「町の展望」
父が開業をしていたので、花房医学士は卒業する少し前から、休課に父の許へ来ている間は、代診の真似事をしていた。 花房の父の診療所は大千住にあったが、小金井きみ子という女が「千住の家」というものを書いて、委しくこの家の事を・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
出典:青空文庫