ネフロンのしくみ
腎臓の主なはたらきは、血液をろ過して尿をつくることですが、その中枢ともいえるシステムが「ネフロン」です。 ネフロンとは、糸球体とボーマンのうからなる腎小体と、腎小体から続く尿細管までを一つの単位として表わす言葉です。 腎臓はネフロンの集合体であり、左右の腎臓にはそれぞれ約100万個、合計約200万個ものネフロンが存在するといわれています。 ただし、常に働いているのは、ネフロン全体の6~10%ほどです。ネフロンは交代で働くようになっており、かなりの余裕をもって機能しているといえます。 そのため、腎炎などの病気でネフロンの機能の一部が失われても、残りのネフロンによって機能はカバーされます。 ネフロンの糸球体は、毛細血管が糸玉のように丸く集まってできています。大きさは0.2mmほどで、かろうじて肉眼で見ることができます。 腎臓に流れ込んだ血液は、糸球体の毛細血管を通過する間にろ過されます。毛細血管の壁は3層構造になっており、内側から「毛細血管内皮細胞」「糸球体基底膜」「足細胞」といいます。 毛細血管内皮細胞には、直径50~100mmほどの孔がたくさん開いているため、透過性が高くなっています。糸球体基底膜は、細かな線維が絡み合っており、また、足細胞には約5~10mmの小さな孔があるため、赤血球・白血球・血小板やたんぱく質などの大きな分子は通過できません。 糸球体は、血液を段階的にろ過するシステムになっています。 糸球体でろ過された原尿は、皮質と髄質のなかを複雑に走る尿細管で再吸収されます。 尿細管は、糸球体を出て皮質から髄質に向かう「近位尿細管」「下行脚」、Uターンして皮質に向かう「上行脚」「遠位尿細管」と続きますが、ここまではほかの尿細管との分岐や合流が一切ない1本道です。 遠位尿細管の最後は集合管に合流します。 集合管では、ホルモンなどの作用を受けて、最終的な尿の成分調整が行われます。たとえば、脳下垂体から分泌されるバソプレシンというホルモンは、集合管の細胞膜に働きかけて、水を通しやすくします。結果、水が再吸収され、尿が濃縮されて濃い尿がつくられます。 こうして原尿の約1%が尿として腎杯に注がれ、腎盂を通って尿管へと運ばれます。
拍動のメカニズム
心臓は、心筋が規則的に収縮と弛緩を繰り返すことによって、一定のリズムで拍動を続けています。 心臓が休むことも大きく乱れることもなく、規則正しく拍動を続けていられるのは、"刺激伝導系"というメカニズムのおかげです。 刺激伝導系の発端は、心臓の運動の司令塔である"洞房結節(右心房の上端にある)"から「動け」という電気刺激の信号が発せられることです。 その信号は右心房の壁を通り、右心室との境界周辺にある房室結節に伝わります。さらに、そこからヒス束→プルキンエ線維(拍動の刺激を伝達する最終部分)に伝わり、最終的に信号に反応した心筋が収縮して拍動が生じます。 この電気信号は、房室結節でとてもゆっくりと伝えられるため、心房と心室では収縮に時間差ができます。 この時間差があることで、心房が収縮し、血液を心室に充満させ、次いで心室が収縮して血液を排出するという流れがスムーズに行われるのです。 血液の循環にあたって、避けなければならないのが血液の逆流です。そこで、血液が一方向だけに流れるように働いているのが、心臓内にある4つの弁です。右心房と右心室の間にある「三尖弁」、左心房と左心室の間にある「僧帽弁」、そして肺動脈への出口にある「肺動脈弁」、大動脈への出口にある「大動脈弁」がそれです。 心臓が静脈から血液を取り込むときには三尖弁と僧帽弁が開き、肺動脈弁と大動脈弁が閉じます。逆に、血液を送り出すときは三尖弁と僧帽弁が閉じ、肺動脈弁と大動脈弁が開くというように、交互に開閉を繰り返して血液の逆流を防いでいます。 安静時と運動時では、心拍数や心拍出量を調節する必要があります。 調節機能としては、心筋が引き伸ばされる力に比例して、心筋細胞自体が収縮力を増すこと。また、自律神経(交感神経、副交感神経)から発せられるシグナルによって、心筋がその時々に必要な心拍をおこし、血液を全身に送り出すことなどがあげられます。 からだの各部位に必要なだけの血液を送る調節は、安静時では毎分の心拍数が70回、心拍出量は5.5L程度ですが、激しい運動を行った直後には、毎分の心拍数は200回以上、血液の拍出量は25Lにも達します。
“鼻”の2つのはたらき
鼻は、外側から見える「外鼻」と、孔の中の「鼻腔」とに大きく分けられます。 外鼻の中心を鼻背、目尻の間を鼻根、下方の先端を鼻尖、孔の周りを鼻翼といいます。鼻背の上3分の1ぐらいは骨で硬くなっていますが、それより下は軟骨でできています。 鼻孔から鼻腔に入った空気は、鼻道という空気の通り道を通ります。鼻道は、空気と一緒に吸い込まれた"ほこり"などが気管に入らないように鼻毛や粘膜に覆われており、これらのフィルター効果によって、ほこりを絡め取っています。 鼻腔は、鼻中隔によって左右に分けられて、さらに鼻甲介という横のひだで上、中、下3つに分かれています。鼻から吸い込んだ空気は鼻道・咽頭を通り、気管、肺へと進み、肺から出された空気は再び鼻道から体外へ出されます。 また、鼻中隔と鼻甲介は、毛細血管が通る粘膜に覆われています。鼻腔内では、毛細血管の熱を鼻孔から入った空気に伝えて温め、粘膜上皮から分泌される水分で空気に適度な湿気を与えています。このため、鼻道を通過した空気は、温度25~37℃、湿度35~80%の状態に調整されます。 上鼻道内の天井部の粘膜には、「嗅上皮」という切手1枚程度のスペースがあり、においを感知する嗅細胞が200万個も存在します。ここで"においの元"を感知します。 においの元は、空気とともに鼻から入ってくる化学物質です。 鼻腔内の粘液で融解された化学物質は、嗅上皮にある嗅細胞から出る"嗅小毛"という線毛にとらえられ、においの電気信号となります。 においの信号が、嗅球に伝達され、知覚します。さらに、大脳がこの信号を処理すると、においの識別が行われます。 鼻づまりなどをおこし、口で呼吸をしているときには、においがわからなくなります。これは、化学物質が嗅上皮に届かないことによって、においの信号が脳に届きにくいことからおこる現象です。
平衡感覚のシステム
体の平衡は目・耳・手足・脳のネットワークによってつかさどられていますが、なかでも重要な情報を提供しているのが内耳です。 内耳は聴覚をつかさどる蝸牛管と、平衡感覚をつかさどる三半規管と耳石器の三つの器官から構成されています。ちなみに、三半規管と耳石器を合わせて「前庭器官」と呼んでいます。前庭器官からは平衡感覚を伝える前庭神経が出ていて、脳幹へとつながっています。 三半規管は、外側半規管、前半規管、後半規管の3つの半規管からなっています。外側半規管は前後の水平回転、前半規管と後半規管は直交する2軸の垂直回転の動きや速さを感知しています。 頭を動かすと、三半規管のなかの内リンパに流れが生じ、この流れを感覚細胞がとらえ、頭が動いた方向や速さを認識するしくみです。 また、耳石器は水平・垂直方向の傾きと動く速さを感知しています。 耳石器のなかには卵形のう、球形のうと呼ばれる2つの器があり、それぞれには炭酸カルシウムからできた小さな石(耳石)が詰まっています。 頭を動かして、重力の方向が変化すると、耳石が動き、配置にズレが生じますが、このズレを感覚細胞がとらえ、からだの傾きや動きを認識するしくみになっています。
骨の構造
骨は、とても小さな骨細胞(骨芽細胞)の集合体が石灰質化したものです。よくみると複雑な構造をしていて、血管も無数に通っています。 骨の構造は、表面を覆う白色の結合組織である骨膜、その内側の硬い骨質からなる緻密骨、内部に骨髄を含む柔軟な骨質の海綿骨という3層からなります。 骨膜には、神経・血管・リンパ管が通っていて、刺激伝達や栄養の運搬という仕事を担い、骨の成長をつかさどります。 そして、骨膜と緻密骨は、シャーピー線維(結合線維)でしっかりと結合されています。 主成分のカルシウムやリンが厚く沈着した骨質をもつのが、緻密骨です。 緻密骨の中央には、ハバース管という血管を通す管があり、骨細胞に栄養を運ぶ役目を担っています。ハバース管を緻密質の骨が幾重にも包み込んで緻密骨の1単位となり、それが集合体となっています。 そして、緻密骨の集合体の内側には、マングローブの根っこのように密集した柔らかな海綿質でできた海綿骨があり、脊髄を覆っています。 中心にある骨髄腔は、骨はなく空洞になっています。 骨髄腔のなかは、血液をつくる成分の骨髄で満たされています。
免疫機能のはたらき
免疫とは、からだに侵入したウイルスや細菌など、病原体を血液中から排除するために働く、体内のセキュリティシステムです。 このシステムを機能させるのは、リンパ球のT細胞、B細胞、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)、マクロファージ、顆粒球など白血球の仲間たちです。 体内で異物を発見すると、最初にマクロファージや顆粒球の好中球が異物を食べ、NK細胞が異物を破壊します。これが「自然免疫」という初期の防御システムです。 自然免疫で対処しきれない場合は、さらにほかのリンパ球が対応をします。このリンパ球による異物への反応を「獲得免疫」といい、"体液性免疫"と"細胞性免疫"の2種類に分けられます。 体液性免疫は、異物(抗原)が侵入すると、まずマクロファージが異物を捕え、抗原の情報を認識してヘルパーT細胞に伝えます。同時に、化学物質を放出してB細胞を形質細胞に増殖させて大量の抗体をつくり出し、抗原を一つ一つ抗体で取り囲み、マクロファージが飲み込む―というものです。 細胞性免疫では、T細胞とマクロファージが抗原を直接攻撃します。マクロファージは侵入してきた抗原の情報を認識し、ヘルパーT細胞に伝えます。その情報からヘルパーT細胞は、サイトカインを分泌して、キラーT細胞や、マクロファージなどを活性化させ、抗原を破壊して貪食させます。 免疫にかかわる細胞の中心となるのは、白血球の仲間、リンパ球です。 リンパ球には、胸腺(心臓の上にかぶさり、両肺の間の上部に位置する臓器)を経由して分化するT細胞と、胸腺を経由しないB細胞があります。 T細胞は、ウイルスや、がんを攻撃したり、生理活性物質(ホルモン)を生み出すはたらきをします。 T細胞は胸腺で分化し、成熟してサプレッサーT細胞、ヘルパーT細胞、キラーT細胞に分かれます。B細胞は、ヘルパーT細胞の指令により、抗体をつくるために分裂をしながら増殖して、異物(抗原)を攻撃します。 そのほか、自己判断で異物やがん化した細胞を攻撃、処理するNK細胞、病原菌を食べ、リゾチームで溶かして消す好中球など、免疫系にはさまざまな種類と役割の違う細胞があり、それぞれの役割を果たしながら連携して、異物や病原菌からからだを守っているのです。
目・耳の検査の目的
視力・眼底・眼圧の検査は、目の異常や病気を調べるための検査です。 聴力検査は、耳の聞こえを調べる検査です。主に耳の病気や聞こえの機能の不調などを早期に発見するために行われますが、外耳から脳までのトラブルをチェックできます。 視力検査の基準値は、左右ともに0.7以上です。0.6以下になると、矯正が必要になります。 眼底検査は、0~4までの5段階で程度を分類しています。基準値は0です。 眼圧検査の基準値は、10~21mmHgです。高い眼圧が続くときは、早期に治療をしないと失明するおそれがあります。 聴力検査は、1000Hz・30dB、4000Hz・40dBの音の両方が聴取可能であれば、正常とされます。 眼に入った光は、角膜で大きく屈折し、水晶体で屈折を調節されてから、網膜で像を結びます。この時、屈折率が正常であれば、網膜でぴったりと像を結び、ピントが合うのですが、屈折率が弱過ぎたり、強過ぎたりすると、ピントが合いません。これを屈折異常といい、近視や乱視、遠視などが疑われます。 眼底検査の異常には、緑内障や白内障、網膜剥離、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症など眼の病気のほか、高血圧や動脈硬化、糖尿病、膠原病、感染症、血液疾患、脳腫瘍、くも膜下出血、硬膜下出血などもかかわっています。 眼圧検査が基準値を超える場合は、高眼圧症や緑内障が疑われます。
リンパ系の構造とはたらき
からだのなかには、リンパ管という細い管のネットワークが張り巡らされています。 リンパ管は、全身に網の目のように広がっている細いリンパ管(毛細リンパ管)が、合流しながら太くなっていきます。 右側上半身のリンパ管は、合流を繰り返しながら、右リンパ本幹(右胸管)へ、それ以外は左リンパ胸管(胸管)につながります。最終的には右リンパ本幹は内頸静脈へ、左リンパ胸管は鎖骨下静脈へと合流し、血液に戻ります。 毛細リンパ管の壁は内被細胞でできていて、随所に細胞の間が開いている所があり、その隙間からリンパ球を含む組織液がしみ出てリンパ液となります。リンパ管を通って静脈に戻るリンパ液は、心臓から動脈を通り、毛細血管から再びしみ出してリンパ管に入り、循環します。 リンパ管の合流地点の要所には、リンパ節(リンパ腺)と呼ばれる豆状にふくらんだ器官があります。1~20mmという大きさで、数は全身に約800個。首、わき、ひじ、ひざ、足の付け根となる鼠径部など、四肢や頭と体幹をつなぐ関節部に集中しています。 リンパ節は、ケガなどをして細菌などが体内に入った場合、それらをせき止める場所です。細菌が血液に混入するのを防ぐため、傷を負った部位から近いリンパ節で細菌を捕え、その場にとどめます。 そのため、傷口とは別に"リンパ節が腫れる"などの炎症をおこしますが、リンパ節より先に細菌を通さない"関所"の役割を担っているのです。 リンパ液の成分は、血漿とほぼ同じです。しかし、たんぱく質量は少なく、白血球の一部であるリンパ球が含まれています。 リンパ球には、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞など複数の種類があります。これらは、侵入してきた病原体を攻撃するというはたらきは同じですが、複数の菌に対処できるように、それぞれ攻撃相手となる外敵を違えています。 また、B細胞やT細胞、マクロファージ、樹状細胞などの免疫細胞は、胸腺、脾臓、リンパ節、パイエル板、扁桃、虫垂、赤色骨髄といった付随的なリンパ組織を足場に使って、からだを循環しています。