・・・ 象さんというのは、或いは、増産ではなかろうか。その竹内トキさんは、それまでずっともう永いことお役所に勤めていたのだそうだから、「増産が来た」というのが、何かお役所の特別な意味でも有る言葉で、それが口癖になっていたのではなかろうか、とも・・・ 太宰治 「親という二字」
・・・学校当局は、丁度幣原内閣が、増産対策も、食糧対策も現実には持っていなくて自然、働く者の生産参加と人民の食糧管理又は供出の管理に任せなければならないでいるとおりに、学生の問題を学校当局として処理して行く能力を欠いてしまっている。これまでの学校・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・ 米というものが、日本では大体みんな食べているもの、という心やすい食物から、だんだん不足な食糧、増産のいる主食、配給不足の命の綱、闇米とおそろしいものに変りつつあった時期である。その時期に、日本ではじめて農民の勤労姿が、郵便切手の上にう・・・ 宮本百合子 「郵便切手」
・・・食糧の計画的生産、計画的配給は日本では手後れに計画されて、しかも各生産部門における能率低下の原因と反比例する増産の必要に追立てられた。男手を失った農村の婦人達が、割当だけの供出量を生産して軍需を充たし、なお自分のところへ幾らかの余剰を残すた・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫